ブレゲといえばクラシックを踏襲した上品なドレスウォッチのイメージが強いが、それとは対象的にパワフルで男性的なデザインを湛えるのがクロノグラフのシリーズ、「タイプXX(トゥエンティ)」と「タイプXXI(トゥエンティワン)」だ。
これらのシリーズは、ブレゲが1950年代にフランス海軍航空部隊のために製造した時計をルーツとし、飛行中の連続した時間計測のために必要とされたフライバック・クロノグラフを備えている点を特色とする。その最新作が2016年発表の「タイプXXI 3817」である。
この時計に刺激を受けるのは、こんな男だ!
・男はタフであるべきと考える人
・本物、本格志向に憧れる人
・ヴィンテージなテイストに引かれる人
機能面では特殊なクロノグラフを備えており、クロノグラフの秒計測と分の積算表示をともにセンター針で行う。デザイン面では、スレートグレーのダイヤルとヌバックのストラップを合わせて、上品なヴィンテージ感を演出しているのが特徴だ。またシリーズで初めて、ケース裏からムーブメントを眺められるシースルー・ケースバック仕様が採用された。
さて、機械式時計の機構開発において、ブレゲの功績は疑いようがない。ブランド創始者のアブラアン‐ルイ・ブレゲは、18世紀から19世紀にかけて数々の機構を発明し、時計の歴史を200年早めたといわれるまさに天才時計師だった。
20世紀になると時計製造以外でもう一つ、ブレゲの名声を広げた分野がある。それが航空の世界だった。創始家5代目に当たるルイ‐シャルル・ブレゲは、ヘリコプターの原型とされるジャイロプレーンを開発するほか、1916年には航空機「ブレゲXIV」も製造する。こうした航空業界への参入と並行して、コックピットの計器に用いるクロノグラフやパイロットウォッチの製造を行うようになっていったのである。
航空分野でも名を馳せたブレゲは、1950年代になるとフランス軍からある依頼を受ける。海軍航空部隊(通称アエロナバル)のパイロット向け腕時計を製造してほしいというリクエストだった。
ブレゲは、フランス航空試験所が制定した各種条件をクリアして、1954年に3カウンターと回転式ベゼルを備えたパイロットウォッチを完成させる。この時計は「タイプXX」と命名され、以降、1980年代初頭までフランス空軍と海軍航空部隊の公式装備品に採用された。30年近くにわたり、パイロットたちから信頼を得続けたのである。
こうした誕生物語を背景に持つのが冒頭の「タイプXXI 3817」である。やや厚みのあるケースは堅牢性確保のためであり、インデックスやベゼル上の大振りな数字は視認性を高めるための意匠。軍向けのミルスペックを追求した末に到達した時計ならでは力強さ・武骨さがあり、ビジネスシーンでもタフでアクティブな個性を主張するのにうってつけの時計である。
時計のバックグラウンドを知れば、外観からはわかりにくい格の違いが見えてくる。ミリタリー調やミリタリーテイストでは満足しない、“本物の男”にこそふさわしいクロノグラフだ。
働く男を刺激するクロノグラフ#5
ブレゲ「タイプXXI 3817」
「タイプXXI」は、センターのクロノグラフ秒針と60分積算計の分針が同時にフライバックする特殊なクロノグラフを備えたシリーズとして2004年に登場した。この最新作は、スレートグレーのダイヤルとヌバックのストラップを組み合わせて全体にヴィンテージ感を創出。シリコン製部品を用いた先端的なムーブメントがシースルーバックから眺められる。日付と昼夜の表示も備える。
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