ウエアをはじめ、シューズ、バッグなど、ここ数年はファッションのスポーティー化が進んでいる。こうした流れを受けてか、高級時計のデザインも徐々にスポーティー路線へとシフトしつつある。アクティブな腕時計として不動の人気を誇るクロノグラフに加え、優れた防水性を備えたダイバーズウォッチや航空操縦士向けのパイロットウォッチといったスポーツウォッチは今年も引き続き元気がいい。

さらに今年は、そうしたスポーツウォッチのアクティブさを、デイリーユースで活躍してくれるデザインにまとめ上げた「スポーティー・シンプル」な腕時計が多数見られたことも印象的だった。こうした時計のメリットは何といっても、オンタイムの上品な装いにもオフタイムの軽快な装いにも合わせやすい使い回しの良さにある。

デザイン面でのメリットに加え、機能を時刻表示のみに絞ったり、あるいはプロ向けのスペックを日常生活レベルに抑えたりすることで、価格的にも魅力的なモデルが少なくない。使い回しがきき、手に取りやすいとなれば、高級時計デビューの1本としても問題なくお薦めできる時計だ。

■性能、サイズ、高級感のすべてがアップ
ロレックス「オイスター パーペチュアル ヨットマスター 42」

18Kホワイトゴールドケース。ケース径42mm。自動巻き。チタン合金にエラストマーをコーティングしたストラップ。265万円(税別予価)。2019年春発売予定

近年のロレックスは、完全自社開発・製造の新世代ムーブメントへの移行を順次進めている。今年はセーリングウォッチのコレクション「オイスター パーペチュアル ヨットマスター」から、新世代キャリバーの3235を搭載したモデルが登場した。ケースの素材はコレクション初となるホワイトゴールド製で、サイズはコレクション最大径となる42mmとなった。両方向回転ベゼルはマットブラックセラミック製で、60分目盛り入りのセラクロムベゼルインサートが備わる。クラスプにはストラップの長さの延長が可能なエクステンションシステムが採用された。ロレックス自社認定の高精度クロノメーター。100m防水。パワーリザーブは約70時間。

■軽快さとドレス感の巧みな融合
カルティエ「サントス デュモン」

ステンレススティールケース。ケースサイズ38×27.5mm。クオーツ。アリゲーター・ストラップ。37万円(税別)©Cartier

カルティエの「サントス」は、1904年に誕生した世界初の本格的な男性用腕時計。当時パリで名を馳せたブラジル人飛行家、アルベルト・サントス=デュモンのために友人のルイ・カルティエが制作したという話は、時計好きの間ではつとに有名なエピソードだ。今年はそのオリジナルデザインに範をとった「サントス デュモン ウォッチ」が新しく登場。ケースやベゼル、ローマ数字などが細みにデザインされ、全体にエレガントな印象が際立つ。さらに内部機構をクオーツムーブメントとすることで7.3mm厚という薄型ケースに。シャツの袖に収まるドレッシーなスポーティーウォッチだ。カルティエの中では手にしやすいプライスも魅力。

■カーレースのスピリットをシンプルに表現
タグ・ホイヤー「オータヴィア キャリバー5 COSC」

ステンレススティールケース。ケース径42mm。自動巻き。カーフ・ストラップ。38万5000円(税別予価)。2019年6月発売予定

カーレースとのかかわりが深いタグ・ホイヤー。1933年製の車のダッシュボード計器に着想を得て1962年に腕時計コレクション化されたのが「オータヴィア」である。その後、80年代に一度生産終了となったものの、2017年に復刻され、今年レギュラーコレクションとして装い新たに登場した。このモデルはCOSC認定のクロノメーターであるだけでなく、内部のキャリバー5には業界初となるカーボンコンポジット製ひげぜんまいを採用。温度変化や衝撃などへの耐性が向上された。センター3針、日付表示のシンプルな機能だが、ベゼルに分目盛りを設けて車の世界のスポーティーさを創出。回転式ベゼルはブルーセラミック製。

■本格上陸2年目にして圧倒的なプレゼンス
チューダー「ブラックベイ P01」

ステンレススティールケース。ケース径42mm。自動巻き。カーフ×ラバー・ストラップ。38万7500円(税別予価)。2019年7月発売予定

かつてチュードルという名で時計好きに親しまれたブランドが、昨秋、チューダーという正式名で日本への本格上陸を果たした。ブランドの創立者はロレックスと同じハンス・ウィルスドルフで、ロレックスの技術や信頼性をベースに、より大胆に、より先駆的にという方向を標榜するウォッチメーキングが特徴だ。写真の新作は1950年代にチューダーが製造したダイバーズウォッチに基づいたもの。4時位置にずらした大型のリュウズとリュウズガード、何より上下のベゼル間に設けられたエンドリンクでベゼルの誤回転を防ぐ仕組みは、タフな環境でのハードユースを前提とすればこその斬新さが光る。これでCOSC認定を取得して、税別30万円台という価格もアグレッシブだ。

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