魅惑の機械式ワールド、そのエントリーの役割を担う
フォルムは紛うことなきアールデコ・スタイル。だが顔つきはクラシックとコンテンポラリーが併存したような独特な趣。上品でありながら個性的でいて、感性の豊かさをも感じさせる。控えめを旨とすべきビジネスの装いにおいて手元でさり気なく個性を主張してくれそうだ。フレデリック・コンスタントから登場した日本限定モデルのことである。
このところフレデリック・コンスタントの元気がいい。今春にはスイス・ジュネーブの本社工場が倍に拡張された。スイス製機械式時計はクオーツショックから復興した1980年代以降、右肩上がりに価格上昇を続け、気がつけば手に取りやすい価格帯の時計がなくなりつつある。多くのブランドが高価格帯路線を志向する中で、創業以来の理念である「手の届くラグジュアリー」を貫くフレデリック・コンスタントが、スイス製機械式時計のエントリー的な位置づけとして支持を拡大しているのだろう。価格と品質のバランスに優れたリアルウォッチの部類では目が離せない存在になってきた。冒頭のモデルもその例に漏れず、ダイヤルにいくつものオープンワークを施す手間をかけながらプライスは良心的。価格以上の満足感がある。
お得意のハートビートがさらに大胆に進化
edit & text:d・e・w
photograph:Shoichi Kondo