265年の歴史が教える教訓

――ルイ・フェルラCEOにお聞きします。新型コロナウイルスの発生を受けて、御社の現状を教えてください。

【ルイ・フェルラ(以下フェルラ)私たちヴァシュロン・コンスタンタンのスイス本社は、4月中旬、13日から仕事を再開した。まだ多くのことを言える状況にはないが、1カ月以上前にすでに事業を再開し、前に進み始めている。

――事業再開にあたり、どんなことを意識していますか。

【フェルラ】二つ言いたいことがある。まずは、顧客、社員、パートナー、プレスのみなさまの安全、健康を第一に考えなければならないということ。このインタビューも本来なら直接話したかったが、安全を優先してビデオ取材という形をとっている。

もう一つが、これまでしてきたことを着実に続けること。特に意識しているのが、顧客に対してベストなサービスを提供し続けることだ。いま、われわれは顧客に対して電話でのコンタクトも行っている。どんな有事のときでも身近に感じられる存在であるために。このコミュニケーションはたとえばバースデーなど特別な機会に限らず、また、いまこのときに限らず年間を通して続けていくつもりだ。

同時にデジタルでのコミュニケーションも力を入れている。ウォッチズ&ワンダーズ(※)のデジタルプラットフォームがオンラインで提供されているが、われわれの新製品の情報はすべてそこで公開されている。誰もがアクセスできるような体制を整えている。

※ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(WATCHES & WONDERS GENEVA)。2020年4月下旬にスイス・ジュネーブで開催予定だった高級時計の新作フェア。旧SIHH(ジュネーブサロン)。新型コロナウイルス感染拡大防止のため開催中止となり、オンラインで新作情報を発信している。

ブランドCEOのルイ・フェルラ氏(右)と、製品開発を取り仕切るスタイル&ヘリテージディレクターのクリスチャン・セルモニ氏。インタビューは4月下旬にZoomを使用して行われた

――今後はオンラインでのコミュニケーションが増えてくるのでしょうか。

【フェルラ】もちろん対面のコミュニケーションを取りたいと思うけれども、いまはオンラインに頼らざるを得ない。そして、今後は360度のエコシステムを構築したいと考えている。プラットフォームをはじめ、コマーシャルやプレスリリースといったさまざまな情報をオンラインで発信して、いくつものタッチポイントを設けることで、多くの顧客やパートナー、メディアの要求に応えられると思う。加えて、私たちのネットワークやブティックもある。われわれの時計は最初の一本として買う時計ではないかもしれない。だからさまざまなものを発見して、新しい知識を得て、そうやって私たちの顧客になっていただけるものだと考えている。

――ヴァシュロン・コンスタンタンはスイス時計産業においても、少なからず影響力を持つブランドです。このたびの新型コロナウイルスの世界的拡大は、スイス時計産業の何かを変えるきっかけになり得るでしょうか。

【フェルラ】時計産業だけでなく多くの産業で変化がもたらされるだろう。ただ、私たちの目標は変わることがない。それは、世界で最も美しい時計をつくり続けることだ。私たちは265年以上の歴史を持つ、時計製造を間断なく続ける最古のブランドである。複雑時計をつくる技術、仕上げやメティエダール(注:芸術的な手仕事)などの審美性、そして伝統と革新。この4つのDNAを継続していくことが重要だ。

2020年のテーマは「空想への旅」

――続いてスタイル&ヘリテージディレクターのクリスチャン・セルモニ氏に伺います。2020年の新作の傾向をお聞かせください。

【クリスチャン・セルモニ(以下セルモニ)】今年、ヴァシュロン・コンスタンタンはコレクターのみなさまを空想の世界へとお連れする。われわれの時計はまず何よりも、感情と創造性と想像力が詰まっている。この部分を探求することで、時計職人や技術者が誇る力強いビジョンと創造性をお伝えしたい。

――ヴァシュロン・コンスタンタンの強みが最もよく現れている自信作は?

【セルモニ】「オーヴァーシーズ・パーペチュアルカレンダー・エクストラフラット・スケルトン」だ。スポーティー・シックなデザインとコンプリケーションの融合、そして精緻なメカニズムの核心部へと誘う旅。ヴァシュロン・コンスタンタンが得意とするオープンワークの技術もいかんなく発揮されている。インターチェンジャブル・ブレスレットにより、仕事にもオフにも楽しめるはずだ。

「オーヴァーシーズ・パーペチュアルカレンダー・エクストラフラット・スケルトン」。永久カレンダー機構を厚さ8.1mmのケースに収めた薄型の複雑時計。ケース、ブレスレットは18Kピンクゴールド。ケース径41.5mm。自動巻き。5気圧防水。アリゲーターとラバーのストラップが付属。時価(参考価格1328万円)。2020年秋発売予定。ブティック限定販売

――エグゼクティブの読者に薦める1本はどれでしょう?

【セルモニ】1本だけと言うならば、「トラディショナル・トゥールビヨン・クロノグラフ」を選ぶ。モノプッシュ・クロノグラフおよびトゥールビヨンの精度が備わったコンプリケーション。コノサー(注:目利き、愛好家)の会社役員や管理職に最もふさわしいモデルだ。

「トラディショナル・トゥールビヨン・クロノグラフ」。リュウズと同軸のプッシャーで操作するワンプッシュ・クロノグラフとトゥールビヨンを一体化した機械技術、トゥールビヨン・キャリッジの仕上げの美しさなどに、ブランドのDNAを宿す。18Kピンクゴールドケース。ケース径42.5mm。手巻き。3気圧防水。アリゲーター・ストラップ。時価(参考価格2280万円)。2020年秋以降発売予定

2020年5月末現在、ヴァシュロン・コンスタンタンの日本の直営店は一部休業中。代替として、購入した時計を自宅へ届けてくれる電話販売、公式サイトで質問などに答えるチャット機能、ブランド・アンバサダーが電話やメールで対応するコンタクトセンターのサービスを行っている。購入や相談はこれらのサービスを利用のこと。

問い合わせ情報

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ヴァシュロン・コンスタンタン
TEL:0120-63-1755


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