見事な仕上げ、美しい調和はメゾンに息づく技と感性の賜物

シンプルウォッチはごまかしが利かない。腕時計を構成する最低限の要素のみでデザインしなければならず、そのためブランドの美意識、サイズやバランスの感覚、仕上げの質が問われるからだ。このシンプルウォッチで一日の長があるのがヴァシュロン・コンスタンタンである。

ヴァシュロン・コンスタンタンは創業から268年にわたり時計製造を続けるスイス・ジュネーブ発のメゾン。老舗中の老舗でありながら新しさを受け入れる姿勢、腕時計のバランスを知り尽くした感性、細部の仕上げへの徹底したこだわり――これらに基づいて美しいタイムピースを創造するのがこのメゾンの時計作りだ。とりわけ丸形ケースの「パトリモニー」コレクションは、ケースの丸みやベゼルの幅、バトン針やくさび形インデックスの細さ・長さ、ドット形の分目盛りなど、あらゆる要素が計算し尽くされて美しく調和し、足すも引くも許さない緊張感さえ漂う。この上質なシンプリシティーにレトログラード機構を載せたのがここで取り上げる2モデルである。

レトログラード(仏語で逆行の意)とは指針が扇状の目盛りに沿って進み、終点に達すると起点にジャンプして戻る機構のこと。耳目を集めるような派手さはないが、戻るはずのない時間が戻るような観念的な針の動きと奥深いシンプリシティーが呼応して、通好みの妙味がある。

時計裏面
ヴァシュロン・コンスタンタンは製造する大半の時計で美観と高性能の証しであるジュネーブ・シールを取得する。今回取り上げた2モデルも同様。ムーブメントのブリッジとケースの裏ぶたに刻印されたジュネーブ州の紋章がその印
ムーンフェイズ機構
「パトリモニー・ムーンフェイズ&レトログラード・デイト」には、122年に1度しか修正を必要としない高性能のムーンフェイズ機構も備わる。ホワイトゴールド製の月が浮かぶ夜空には、精密に星座を描く凝りよう
時計
「パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト」。2つのレトログラード機構を搭載し、9時から3時の目盛りで日付を、7時から5時にわたるインジケーターで曜日を表示する。どこか懐かしいサーモンカラーの文字盤だが、そこにネイビーの表示を合わせて巧みにモディファイした。ジュネーブ・シール取得。プラチナケース。ケース径42.5mm。自動巻き。3気圧防水。アリゲーターストラップ。888万8000円(税込)。2023年限定生産。ブティック限定販売
時計
「パトリモニー・ムーンフェイズ&レトログラード・デイト」。上のモデルと同じレトログラード式の日付表示と高性能の月齢表示を備えたモデル。時間が戻るようなミステリアスな感覚と天文世界の悠久の時間。時間の概念を固定観念から解放してくれそうなユニークさがある。ジュネーブ・シール取得。18Kホワイトゴールドケース。ケース径42.5mm。自動巻き。3気圧防水。アリゲーターストラップ。708万4000円(税込)
問い合わせ情報

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ヴァシュロン・コンスタンタン
TEL:0120‐63‐1755


photograph:Shoichi Kondo、VACHERON CONSTANTIN
edit & text:d・e・w