アウトサイズデイトを重視すればクロノはこうなる
ドイツ・グラスヒュッテにマニュファクチュールを構えるA.ランゲ&ゾーネは今年、「ダトグラフ」の誕生から25周年というアニバーサリーイヤーを迎えた。これを記念して今年のWWGでは、ダトグラフから2つの限定モデルを発表した。
第2次大戦後にドイツ政府に接収され、高級時計の表舞台から姿を消していたA.ランゲ&ゾーネの再興なったのが1990年のこと。4年後の94年に再興後初となる4つのコレクションを発表すると、瞬く間にハイエンドな時計ブランドの地歩を占める。時計の関係者やプロたちは、足すも引くも許さない計算され尽くした美しさ、アウトサイズデイト(大型日付表示)に象徴される視認性の高さ、そして微に入り細をうがつ時計作りという、ドイツ的完璧主義をランゲの時計に見たのである。
それから5年後の99年に登場したダトグラフは、まさにそのランゲ的時計作りの系譜に連なるモデルである。ダトグラフとはデイトとクロノグラフから成るオリジナルのネーミングで、具体的にはアウトサイズデイト(大型日付表示)と、クロノグラフのストップ、リセット、再スタートがワンプッシュで行えるフライバッククロノグラフを搭載するモデルを指す。さらにフライバッククロノグラフは積算計の針が1分に1目盛りずつ進む、プレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンターという独自機構を採用。経過分数の見やすさにもこだわる。
日付表示とフライバッククロノグラフを備えた時計は、特段珍しいものではない。だが、12時位置のアウトサイズデイトをはじめとする各種表示の見やすさ、そしてアウトサイズデイトと2つのインダイヤルが正三角形を描く格調高いダイヤルデザインという点で、大多数のモデルと一線を画すのがランゲのダトグラフである。
オン・オフ問わないブルーダイヤル
そのダトグラフから発表された新作は、まずはパワーリザーブ表示が付いた「ダトグラフ・アップ/ダウン」のニューモデルである。
6時位置のインジケーターは60時間のパワーリザーブ表示を行うもので、これが「アップ/ダウン」の由来となった。現行のラインアップでは、プラチナもしくは18Kピンクゴールドのケースにブラックダイヤルを合わせたモデルの展開だったが、今年はそこに18Kホワイトゴールドにブルーダイヤルを組み合わせたモデルが加わった。ビジネスの装いになじみ、なおかつオフのスポーティーなルックに合わせられる軽やかさもある。
メカメカしくも軽妙。こんなコンプリはそうそうない
そしてもう1つの新作が、「ダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨン・ハニーゴールド“ルーメン”」。その名の通りパーペチュアルカレンダーとトゥールビヨン、さらにパーペチュアルカレンダーに連動するムーンフェイズを組み込んだ、ランゲが得意とするコンプリケーションである。
ケースはランゲ独自の合金である18Kハニーゴールドから成る。この合金は純金に銅と亜鉛を加えたもので、ゴールドでありながら硬度が高く、温かみのある色みを特徴とする。
このハニーゴールドと絶妙な調和を見せるのが、半透過性のあるダイヤルだ。アウトサイズデイトなどのメカニズムをダイヤル越しに眺めることができるが、全てを透過させないのは他でもなく視認性を維持するため。時分針やクロノ針、2つのインダイヤル、そしてアウトサイズデイトのディスクには蓄光顔料が塗布されているため、暗がりでも各種表示が目視できる。
ランゲではこの半透過ダイヤルを“ルーメン”と称し、2013年の発表以来、一部の特別モデルに使用してきたが、ハニーゴールドケースとの組み合わせは今回が初となる。端正さや視認性というランゲが絶対に譲れないものはキープしながら、今風にあか抜けたランゲでは希少なモデル。世界限定50本、人生で一度お目にかかれるかどうかのモデルである。
photograph:A. LANGE & SÖHNE
edit & text:d・e・w