品よく見やすい現代的なセクターダイヤル
今年のショパールは例年に増して威勢がいい。ショパールの伝説を作った4重香箱搭載の“クアトロ”をはじめ、世界で最も厳格な品質基準をクリアした“カリテ フルリエ”、複雑機構のミニッツリピーターを備えた“フル ストライク”など、これまでの画期的な機構開発を総括するかのような新作展開となった。
一方で、デイリーに使用できるモデルでも新味を携えた力作が多数登場した。まず目を引くのが、「L.U.C XPS フォレスト グリーン」である。L.U.Cとは、ショパールの創業者のイニシャルに由来するネーミングであり、現代のマニュファクチュール・ショパールの頂点に位置する本格機械式時計のコレクション。その中で、薄型ケースとスモールセコンドを備えた「XPS」モデルから、新しいケースとダイヤルを備えたモデルが登場した。
ケースは80%以上がリサイクル素材から成る独自合金のルーセントスティール製。ショパールが意欲的に取り組むサステナビリティーをさらに推し進める。そこに合わせたのは、分目盛りを2重に配したような独特なトラックデザインのダイヤル。これは同心円状に時表示と分表示の2つの目盛りを備えたダイヤル、通称“セクターダイヤル”に想を得たもの。1930年代によく見られたそのダイヤルをベースに、目盛りの細さ・長さのアレンジや、ダークグリーンカラーの採用などでモダナイズを図った。
そしてL.U.Cの最大の特徴といえるのが、ムーブメントのクオリティーの高さである。このモデルに搭載されたキャリバー L.U.C 96.12-Lもその例に漏れず、コンパクトな設計でありながら積載式2重香箱などの採用により65時間のパワーリザーブを有する。COSC認定取得の高性能に加え、仕上げの美しさもまた何ともL.U.Cキャリバーらしい。
軽量で快適、落ち着きのあるローヌブルーも軽妙
続いて取り上げるのは、2019年に誕生し、早くもブランドのピラーコレクションとなっている「アルパイン イーグル」から登場した「アルパイン イーグル XL クロノ」。このクロノグラフは大半がルーセントスティール製ケースでの展開だったが、今年は質感に優れるグレード5チタン製ケースのモデルが登場した。
軽量で耐傷性に優れるチタンケースは、美しくも軽快なデザインを特徴とするこのモデルに格好のマテリアル。そこにアルプスを流れるローヌ川をイメージソースとした新しいカラー、ローヌブルーのダイヤルを組み合わせた。わずかにカーブしたサンバーストモチーフの装飾はこのコレクションの特徴であると同時に、川の流れも想起させるようで趣深い。
内部に搭載するのは、フライバッククロノグラフ付きのキャリバー Chopard 03.05-C。クロノグラフのストップ、リセット、再スタートの動作をワンプッシュで行うことができる。2016年にCOSC認証を取得して登場して以来、信頼性に定評のあるムーブメントである。
構造の美しさも感じられるシースルー仕様
最後に、アルパイン イーグルからもう1モデル。前述したモデルと同じグレード5のチタン製ケースでありながら、全く印象が異なるのが「アルパイン イーグル 41 XP TT」だ。
ショパールが製造するキャリバーの中で最上位に位置するL.U.Cキャリバーは、コート・ド・ジュネーブやペルラージュといった伝統的な仕上げの美しさが光るものが多い。それらとは別のテイストの美しさを追求したのが、この新作に搭載されたキャリバー L.U.C 96.17-Sである。
サンドブラスト仕上げの地板やブリッジには、肉抜きをするかのように同心円状のオープンワークを施し、そのムーブメントが時計表面からも見えるようにダイヤルを完全に省略。アルパイン イーグルのアクティブな外装デザインとモダンな構造のムーブメントが相まって、コンテンポラリーな印象へと仕上げられた。インパクトが強そうなフェイスに思えるが、時計全体をシルバー系のカラーでまとめ、ケースは8mm厚と薄型の設計。過剰に主張することなく、全体を調和させることを重視したこのバランス感覚がいかにもショパールである。
photograph:CHOPARD
edit & text:d・e・w