夢や感情を創作テーマとするユニークなメゾン

女性の心をつかむような腕時計を、という観点で選ぶなら、やはりジュエラーのクリエーションは外せない。時刻を伝えるタイムピースとしての機能を維持しながら、時代の気分に合った装飾品を生み出すクリエーティビティーはジュエラーの真骨頂である。自由で大胆なインスピレーションとエステティクスを優先した造形がジュエラーの特色であり、いつの時代も女性たちの心をつかんできた理由である。

今回取り上げるヴァン クリーフ&アーペルは、まさにそうした類いのハイジュエラーだ。四つ葉のクローバーに着想を得たアイコンの「アルハンブラ」などからジュエリーの印象が強いが、実は腕時計に関しても1906年のメゾン創業時から作り続けてきた歴史を持ち、ユニークな名作も少なくない。例えば、35年に誕生した「カデナ ウォッチ」の着想源はなんと南京錠。無類のクリエーションとして現在もメゾンのシンボリックなモデルとなっている。

そして近年、他のメゾンと大きく一線を画すのが「ポエトリー オブ タイム」という独自の世界観をコンセプトとしていることだ。“詩情が紡ぎだす時”というテーマで、夢や感情を喚起するようなタイムピースを創造。機能や性能を打ち出しがちなウォッチメーカーとはまったく異なるアプローチが新鮮に映る。

そんなヴァン クリーフ&アーペルから、今回は「ペルレ ウォッチ」をセレクトした。コレクションの特徴であるゴールドビーズが連なるケースは自由で大胆、優雅な遊び心を感じさせるが、ダイヤルのマザー・オブ・パールやそこに施された放射状のギヨシェ装飾は品格に富む。前述のアルハンブラもいいが、「末永くよろしく」という思いを込めるなら、より普遍的な印象のペルレ ウォッチをお薦めする。ラグを廃したセンターアタッチメント、リュウズを省いたケースデザインなど、エステティクスへのこだわりはメゾンの面目躍如である。

また、このモデルには替えのストラップ2本と、18Kイエローゴールド製ピンバックル1つが付属し、工具を用いずに簡単にストラップの交換が行える。気分、シーン、服装に応じてストラップのカラーが変えられることも、ギフトとしての魅力を格上げするはずだ。

「ペルレ ウォッチ」(左)と「ピエール アーペル ウォッチ」
(左)ひと目でそれと分かる特徴的なゴールドビーズを携えた「ペルレ ウォッチ」。18Kイエローゴールドケース。ケース径30mm。クオーツ。30m防水。アリゲーターストラップ(替えのストラップ2本とピンバックル1つが付属)。172万9200円 (右)シンプルなデザインをドレッシーに洗練させた「ピエール アーペル ウォッチ」。18Kホワイトゴールドケース。ケース径38mm。手巻き。30m防水。アリゲーターストラップ。242万8800円(共に税込み)
ケース
ペルレ ウォッチのケースを包み込むように配されたゴールドビーズは2連仕様。ゴールドならではの柔らかく優しげな華やかさを放つ
ダイヤル
ダイヤルはマザー・オブ・パールに深さのあるギヨシェ彫りが施されている。これほど深い彫りを全方向に均一に入れるのは容易ではない。どことなく扇子や衝立を連想させるためか、和装にも似合いそうな趣がある

そして、ペルレ ウォッチに合わせる男性向けの時計として選んだのが「ピエール アーペル ウォッチ」である。

これは前述のカデナ ウォッチと同様に、メゾンの歴史的な名作を現代に受け継ぐコレクション。1949年に、パリきってのしゃれ者だったピエール・アーペルのデザインによって誕生した「PA49」というモデルに基づいてデザインされている。太さや大きさが考え抜かれたローマ数字や時分針、ハニカム状のギヨシェ装飾、滑らかな曲面構成のケース、ラグを省いたセンターアタッチメントなど、洗練されたディテールがつつましくも優雅な大人のエレガンスを織り成す。

ピエール アーペル ウォッチ
今回取り上げたピエール アーペル ウォッチには、薄型の手巻きキャリバー830Pを採用。さらに時計の表裏両面に膨らむような独特のケースフォルムが相まって、着装するとケース厚3.7mmという実際の数値よりも薄く見える。エレガンスの要諦を知るハイジュエラーらしい造形

ヴァン クリーフ&アーペルは、宝石細工職人の家に生まれたアルフレッド・ヴァン クリーフと、宝石商の娘であったエステル・アーペルとの婚姻をきっかけに創業へと歩み始めた。そもそも出自からしてハッピーなムードに満ちあふれ、それが100年以上も絶えることなく継続しているメゾンなのである。年に一度、日頃の感謝や思いを伝えるギフトに、こんなポジティブなバックグラウンドを持つペアウォッチというのも小粋なアイデアだ。

問い合わせ情報

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ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク
TEL:0120‐10‐1906

photograph:Kazuteru Takahashi
edit & text:d・e・w