時計とクルマ、愛好家同士のコラボ
高級時計の世界において、ショパールはクルマの世界と親和性が高いメゾンである。その象徴が、1988年以来オフィシャルパートナーを務めるイタリアの公道レース「ミッレミリア」だ。ショパール共同社長のカール‐フリードリッヒ・ショイフレは、自らもクラシックカーを駆る熱狂的な愛好家。その情熱は単なるスポンサーシップを超え、メゾンの時計開発における重要な柱となっている。
このレースが結んだ縁の一つが、ミラノの名門カロッツェリア「ザガート」とのパートナーシップである。ザガートは1919年の創業以来、航空技術を応用した軽量アルミボディや独創的な空力フォルムで世界を魅了してきた。ショパールとザガートは、2013年、2019年と過去2回にわたりコラボレーションモデルを発表し、時計と自動車という異なる領域のものづくりの哲学を融合させてきた。そして2026年、そのパートナーシップの第3作として、かつてない力作が登場した。「ザガート ラボ ワン コンセプト」である。

構造もアタッチメントも独創的
今作の最大の特徴は、一般的な時計デザインの常識を覆すその設計思想にある。ザガートが手がけた自動車のシャシーに見られる「チューブラー(管状)構造」を時計の基本構造に採用したのである。ムーブメントは強靭なチューブ状のフレームによって支えられており、これは過酷なサーキットでマシンの剛性を確保しつつ軽量化を追求するレーシングカーの原理そのものである。
この設計により、衝撃を受けた際の負荷を効果的に分散し、構造的な安全性を高めることに成功した。また、従来のラグに代わってチューブ状の「オープンループ」を採用。これが手首の形状に合わせて左右に約45度ピボット回転することで、激しい動きの中でも良好なフィット感をもたらす。
こうした斬新な構造を採用するには、強度や耐衝撃性の確保が不可避である。今回ショパールはそのハードルを、セラマイズドチタンという先端素材で乗り越えた。エレクトロプラズマ技術によりチタンを酸化処理したこの素材は、1000ビッカースという極めて高い硬度を誇り、セラミックに匹敵する耐傷性を備えている。航空宇宙産業や自動車製造でも重用されるこの素材を、ケースやオープンループ部だけでなく、ムーブメントの心臓部を支えるブリッジや地板、そしてトゥールビヨンブリッジにまで用いて耐衝撃性を追求。COSC認証を取得したクロノメーターであることもその信頼性の高さを裏付ける。


わずか43.2gの身に着ける“マシン”
基本構造と素材を刷新した結果として得られたのが、圧倒的な軽さである。今作の重量は本体のみで36.5g、ストラップを含めても43.2gと、ショパールのチタン製ウォッチとしては最も軽いモデルとなり、機械式時計全体を見渡しても最軽量級に属すると言っていい。
この軽さこそ最もインパクトの強い魅力だろうが、視線を時計の向こう側に向けると、今作が暗に示しているのはショパール マニュファクチュールが有する技術的バックボーンの深さである。
ショパールは、どちらかと言えば伝統や正統に重きを置き、格調高いエレガンスやディテールの仕上げを得意とするメゾンである。しかしながら、ひとたび“コンセプト”を変え、到達点を定めさえすれば、こんなアバンギャルドな開発だって軽やかに成し遂げてしまう。伝統への敬意を失うことなく、視線は常に未知の世界に向いているのである。このメゾンの懐はまだまだ深い。

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ショパール ジャパン プレス
TEL:03‐5524‐8922
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