カレンダー調整のストレスを克服する新機構
手首にしっかり収まる36mm径のケースはあくまで控えめで、これ見よがしに主張することがない。シンメトリーのダイヤルレイアウトは端正で品格があり、何よりも視認性に優れる。オーセンティックなデザインを基調としながらも、12時位置に置かれたアウトサイズデイトは紛れもないランゲ特有のシグネチャー。今春発表された新作の中で、普段遣いに適した実用的なエグゼクティブウォッチの筆頭として取り上げたいのが、A.ランゲ&ゾーネの「サクソニア・アニュアルカレンダー」である。

「サクソニア」は、第二次大戦後に一時休眠状態にあったA.ランゲ&ゾーネが、ブランド再興後に初めて発表したモデルの一つである。1994年のことだ。ネーミングは1845年にブランドが創業したドイツのザクセン州にちなむ。そこに込められたのは、17~18世紀に芸術・文化・学問の中心地として栄華を極めたザクセンの歴史へのオマージュであり、それを支えた学者や技術者たちへのオマージュである。ランゲの中でもサクソニアは内部機構に凝ったモデルが多いが、それはザクセンの地に古くから息づくインベンティブな精神の発露と言ってもいい。
今年の新作、サクソニア・アニュアルカレンダーもまたこうした流れをくむモデルだ。搭載するアニュアルカレンダーは、時刻に加えて月・曜日・日付、そしてムーンフェイズを表示する実用的な機能である。各月の日数の多寡まで組み込まれているため、暦の修正は1年に一度、2月の末のみに行えばよい。と、ここまでは一般的なアニュアルカレンダーの話。そこに新たに加えたユーザーフレンドリーな機構こそが、エグゼクティブの実用時計として推奨する理由である。
通常、アニュアルカレンダーは、月・曜日・日付、そしてムーンフェイズの表示を個々に調整する必要があるが、ランゲの技術者たちはその煩わしい操作にもどかしさを覚えていたのだろう。それら全ての表示を10時位置のプッシャー操作で1日ずつ先に送れる機構を開発し、組み込んだのである。これにより調整が必要な2月末はもちろん、しばらく着用せずに、ぜんまいがほどけ切ってしまった後のカレンダー調整も格段に容易になった。実際に操作してみると、12時位置のアウトサイズデイトをはじめ全ての表示が一瞬で切り替わるさまは、なかなかに一興である。


端正でオーセンティックなダイヤルデザインとは対照的に、時計の裏面からはサファイアクリスタルのケースバックを通して、精緻な装飾が織り成す優雅な世界が垣間見える。グラスヒュッテストライプが施された4分の3プレート、ハンドエングレービング入りテンプ受け、そしてビス留め式ゴールドシャトンなど、この上ないほど美しい装飾はランゲがランゲたり得るアイデンティティー。一貫して変わることがない。


問い合わせ情報
A.ランゲ&ゾーネ
TEL:0120‐23‐1845
photograph:A. LANGE & SÖHNE
edit & text:d・e・w
