換骨奪胎して新味を成す。それがショパールの本領

ショパールがスイス・フルリエにマニュファクチュール(自社一貫生産体制)を設立したのは1996年のことだ。翌年春のバーゼルワールド(当時の時計見本市)で、マニュファクチュールとして高級時計製造に本格参入することを高らかに宣言し、さらに最初にして最高水準のクオリティーを携えた「L.U.C」コレクションを発表。時計関係者たちの度肝を抜いたことは、今も語り継がれる逸話である。

今年はそのマニュファクチュールの設立から30年。この節目を記念して、先のウォッチズ&ワンダーズ・ジュネーブではショパール マニュファクチュールの30年の歩みを象徴するようないくつかのモデルが発表された。その一つが今回セレクトした「L.U.C ストライク ワン チタン」。1時間に一度、正時が訪れたことを単音で伝える時打ち(パッシングチャイム)機構を備えた複雑時計である。この機構自体は既存のものだが、今年はケース素材にチタンを採用したモデルが登場。硬度に優れるグレード5チタンの特性を生かして、ケース厚9.86mmの薄型時計へと刷新した。ただ眺めるだけではなく、日常的に着用できる複雑時計開発は近年の潮流の一つだが、この新作もそうした方向へとリファインされた一本といえる。

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「L.U.C」は機械性能の面でも仕上げの面でも、ショパールの最上位に位置づけられるコレクション。今年登場した「L.U.C ストライク ワン チタン」は、分針が12時位置に達すると単音が響くパッシングチャイム機構を搭載。ケースには軽量で硬度が高いチタンを用い、ケース厚を9.86mmに抑制。より普段使いしやすいチャイミングウォッチに刷新された。COSC認定とジュネーブ・シールを共に取得。チタンケース。ケース径40mm。自動巻き。非防水。アリゲーターストラップ。943万8000円(税込み予価)
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パッシングチャイム機構の作動時には、1時位置の開口からハンマーがゴングを叩く様が眺められる。12時位置の小窓にチャイム機構のオン・オフを色(白・黒)で示し、リュウズと同軸のプッシャーでその切り替えを行う。分目盛りとサーモンカラーダイヤルの間に、風防と一体になったゴングを配置(記事後半の写真も参照)。ハニカムパターンやスネイル仕上げが丁寧に施されたダイヤル装飾の美しさも目を見張る
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ケースバックもサファイアクリスタル製。コート・ド・ジュネーブやペルラージュなど伝統的な仕上げが施された美しいムーブメント、L.U.C 96.32-Lが眺められる。ショパールが得意とするマイクロローターと積載式2重香箱を採用。パワーリザーブは65時間

このモデルに搭載されたパッシングチャイム機構は、一般的にはストライキング機構、アワーストライク機構などとも呼ばれる。同じく音で時間を伝える機構にはミニット・リピーターやソヌリなどがあり、総じてチャイム機構と称されることが多い。いずれも暗闇でも時刻や時間経過を知らせることを目的として発明され、基本的な考え方は数百年前から大きく変わることなく現代まで受け継がれてきた。もはや改良の余地がないと思われていたチャイム機構の仕組みを、大胆かつ鮮やかに塗り替えたのがショパールである。

音が鳴る仕組みを簡単に説明すると、ムーブメントにハンマーと呼ばれる小さな槌状のパーツとリング状のゴングが備わっており、ハンマーがゴングを叩くことで振動を生じさせ、その振動がケースを介して外に届く。ケース内で生じた振動が外に届くまでの間に弱まってしまうのは、想像に難くないだろう。

この課題に対してショパールが取ったのは、ゴングと一緒に風防を振動させるという前例のない手法だった。ハンマーとゴングをムーブメントのダイヤル側に配置し、ゴングを風防と同じサファイアクリスタル製にする。その上でゴングと風防を一体化できれば、ハンマーの振動を直接風防に伝えることができ、振動の弱化を抑えられるはずだ。こうして開発したのが特許取得のモノブロックサファイア構造であり、これを採用したチャイミングウォッチは音量と音色の美しさの双方で、他と一線を画すほどの仕上がりだった。型破りではあるものの、極めて合理的なアプローチでチャイム機構を塗り替えたのである。

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風防とゴングが一体となったモノブロックサファイア構造。分目盛りに沿ってうっすらオフホワイトに見えるのがゴング。ムーブメントに設置されたハンマーがこのゴングを叩くと、その振動が風防にダイレクトに伝わって外部へ放たれるため、従来の機構よりも音量の弱化を抑えることができる。ショパールが音響を追求した末に到達した新機軸

このチャイム機構のエピソードは、ショパールのウォッチメーキングの本質を物語る。伝統に向き合い、そこから学びながらも、模倣や後追いに甘んじることなく、現代的な発想や技術を加えて新機軸を打ち出す。言わば換骨奪胎の時計づくりこそがショパールのDNAであり、その積み重ねがショパールを高級時計のトップブランドへと押し上げた理由である。

ビジネスの世界においても、これまでのあり方を見直す、現代にふさわしい仕組みをつくる、というプロセスは今まさに求められているものだろう。現状に満足せず、新しいスタンダードを生み出そうとするビジネスパーソンを後押ししてくれるようなメンタリティーに、ショパールの腕時計は満ちている。

問い合わせ情報

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ショパール ジャパン プレス
TEL:03‐5524‐8922

photograph:CHOPARD
edit & text:d・e・w