津波の被害を受けた宮城県南三陸市で大きなプロジェクトが進行中だ。まだ嵩上げ工事の最中の町に子どもたちが桜の苗木を植樹し、20年後には東北一の桜の名所にしようという「SAKURA PROJECTS」だ。被災地に多くの桜を植樹する企画で、目標本数はなんと3000本。ポール・スチュアートは2014年からこのプロジェクトに参画し、現地の子どもたちが希望を込めて描いた桜の絵画から受ける力強いインスピレーションを服のデザインに落とし込んだ。
スーツ地のデザインは、海の深い青をベースに八重桜のピンクを配したストライプ柄。シャツのピンクは、吉野桜の花びらを絞った染料で染められている。ネクタイの柄は吉野桜が舞うデザインで構成したサクラスタイルのペイズリー柄。優しい桜色には、被災地に必ず希望の花を咲かせたいとの願いが込められている。
シンプルなシングルデザインと柔らかなピンクの色使いは、大人の余裕が感じられて上品な印象を醸す。震災復興に思い入れのある服としてだけではなく、桜の季節を待たずとも年間で使えるアイテムになるのではないだろうか。
editor's comment
震災後に「何かできることはないだろうか」と思いをいだきつつ過ごしてきた人も多いことだろう。支援のためのスーツを着て、話題にするだけでも十分。しかも、ちゃんとかっこいいデザインになっているのだから、スーツを新調する際の選択肢に入れておきたい。
text:Rina Araki