ファッションディレクターの青柳光則さんに、ビジネスシーンにふさわしいエグゼクティブのスーツの着こなしを提案してもらった。1回目は、上質の代名詞Ermenegildo Zegnaを取り上げる。
美紺のスーツが、若々しさと行動力をアピールする
新年度は、異動や組織変更にともなう担当者交替など社内外が慌ただしい。新たに担当となったクライアントへの挨拶まわりは、できるだけ早めにして取引先との良好な関係を築きたいものだ。先方も新しい担当者がどんな人物か、さぞや気がかりなことだろう。
客先を訪問する際には前任者が築き上げた関係を引き継ぎながら、イメージを刷新することで自身をアピールしたい。前任が自分の上司だったならば、行動力にあふれる若々しい印象を携えていきたい。しかし、たんにフレッシュなだけでは却って頼りない印象を与えかねない。
そこで頼りになるのが、Ermenegildo Zegna(エルメネジルド ゼニア)の一着。スーツに明るめのネイビーを取り入れる。若さを印象づけるためには鮮やかな紺色が適しているからだ。濃色のネイビースーツは、慎重で腰も重そうな印象に見えるため、どこか重役然とした風情が漂うものだが、明るいネイビーならフットワークも軽快で、親しみやすい人物を演出できる。
エルメネジルド ゼニアは、自社で既製スーツも手がけるラグジュアリーメゾンであると同時に、紳士服生地メーカーとしての世界シェアの約3割を誇るといわれるビッグメゾン。生地の色柄には絶対の自信があり、時代感をも捉えたコレクションをそろえている。
とくに色出しの妙は格別で、同じ紺でも2つと同じものはなく、次のシーズンにはまた新たな紺色を登場させることができるほど、開発力に優れている。今季も美紺のコレクションが豊富にそろっており、着用して行けばきっとクライアントにも好印象を与えることができるだろう。
明るいトーンのネイビーが、爽やかさと軽快な印象を演出
明るいトーンのネイビースーツには、シャツもネクタイも同系色で。シャツは淡くブルーに見えるストライプ柄。白無地よりもVゾーンのコントラストを抑え気味にして、印象を和らげてくれる。ネクタイはジャカードのペイズリーと個性あるものを選んだ。初対面の相手には、個性的な柄のネクタイが記憶に残るポイント作りとなるはずだ。
生地をアップでよく見ると、紺色、水色、白など、何色もの色糸で織られていることに気づくはずだ。生地を織る際、織機に数種類の色を使うほうが、単色の糸を使うより手間がかかることは言うまでもない。なぜ、そんな手の込んだことをするのかと言えば、ひとえに複雑な色糸のミックスが、高級感と美しい発色を生み出すからにほかならない。日本の絣(かすり)織りのような縦横のヘアラインが浮き上がり、光の加減でニュアンスが変わるなど、スーツの個性とともに着る人の魅力を引き立てる効果があるのだ。
ファッションディレクター青柳光則からワンポイントアドバイス
「ゼニアのネイビーは発色が別格ですよ。というのもゼニアは既製服の歴史よりも多くのブランドやテーラーに生地を卸す生地メーカーとしての歴史のほうが長く、その実力はイタリアのみならず世界的にもトップクラスだから。生地の種類も多彩ですが、オーストラリアの自社農場から優秀な原毛を輸入し、紡績から染色から、すべてにこだわっています。シャツ&タイもブルー系の同系色でまとめれば、よりスーツの青の美しさが引き立つでしょう」
問い合わせ情報
ゼニア カスタマーサービス 03-5114-5300
styling:Mitsunori Aoyagi(Hamish)
photograph:Ryohei Watanabe
hair & make:Akira Nishihira
model:Kenji Kureyama(BARK IN STYLE)
edit & text:Yasuyuki Ikeda(zeroyon)