ファッションディレクターの青柳光則さんに、ビジネスシーンにふさわしいエグゼクティブのスーツの着こなしを提案してもらう当特集。5回目は、アメリカントラッドの象徴Polo Ralph Laurenのスーツを取り上げる。

知性と信頼をアピールしつつ貫禄でも勝てるダブル

誰もが一着は験を担いだ「勝負服」としてのスーツを持っていることだろう。企画プレゼンの壇上に上がるとき、重要な契約の席などで着るための勝負服は、背筋を伸ばすとともに心の平静を保つためのお守りのような存在だ。

もし、まだお持ちでなければ濃紺の一着を用意すべきだ。日本には、和名を「褐色(かちいろ)」と呼ぶ色がある。黒味がかった藍染の紺色を差すのだが、この色は着込むほどに赤味が浮き上がり美しく深みある紺色となる。「褐色」は転じて「勝色」。サッカー日本代表のユニフォームにも使われる色である。

美しい紺色を求めて行き着いたのは、ポロ ラルフ ローレンのダブルのスーツ。生地の美しさはしなやかなタッチと上品な艶感にも表れるが、藍色にも似た紺色に美しいニュアンスの光沢が浮く発色は、まさに現代の「勝色」といって差し支えない趣だ。

ダブルは主張が強すぎる気がして敬遠しがち、という方もいるかも知れない。しかしここ数年、ダブルのスーツは、従来のビッグシルエットからスリムでコンパクトなシルエットへと進化している。デザイナーズモードから派生したこの傾向を、巧みにクラシックなスーツに落とし込むテクニックは、ポロ ラルフ ローレンならでは。適度な威厳と洗練、そしてビジネスにふさしい気品もある。役職に見合うスタイルとして、また、実用性のことも考えて、ダブルは実用主義のアメリカントラッドを体現するブランドから選ぶのが正解だ。

風格とモダニズムが共存する新しいダブルのスーツ

風格を残しながら、現代的なシルエットに進化したダブル。ポロ ラルフ ローレンのもつモダンな感性を映し出す。スーツ11万5000円、シャツ1万5000円、タイ1万4000円、チーフ8000円/すべてポロ ラルフ ローレン

シングルに比べてやはり存在感あるダブル。強い印象を和らげるのなら、Vゾーンに明るい色を使ってコーディネートするのがよい。パステルカラーのタイは若いイメージがあるかもしれないが、大人の男性にこそ似合う色。肌質を明るく見せて、活気に溢れる印象を与えてくれる。

ピンクのタイで胸元を華やかに彩れば印象も柔らぐ。

紺色と一口に言っても、藍色から青色に近いものまで様々だ。ポロ ラルフ ローレンのスーツの紺色は、じつに色味が深い。光の加減で様々にトーンが変化するドレープが表れ、優雅な印象を引き立てるのだ。「知性」「誠実」「冷静」など、紺色がもつポジティブなイメージを仕事に活かし、勝ちにいくために最適な色だろう。

鮮やかさと深味が共存する気品あるネイビー。

ファッションディレクター青柳光則からワンポイントアドバイス
「アメリカの東海岸で、知的な富裕層のためのブランドといえばポロ ラルフ ローレン。カジュアルなコレクションのイメージが強いかもしれませんが、ドレスクローズには品の良さとモダンなデザイン性がうまく融合したコレクションがあります。このダブルも非常に美しい素材使いとスマートなシルエットです。恰幅のよい方が着てもスマートに見えますし、細身の人が着てもどっしりとした風格が演出できます。それでいてバブル時代のダブルとはまったく違った高貴な印象もあるんです」

styling:Mitsunori Aoyagi(Hamish)
photograph:Ryohei Watanabe
hair & make:Akira Nishihira
model:Kenji Kureyama(BARK IN STYLE)
edit & text:Yasuyuki Ikeda(zeroyon)