ファッションディレクターの青柳光則さんは「ただいつも着ているスーツの上着を脱いで、ネクタイをはずすだけの間違えた着こなしが定着しては本末転倒」と指摘する。涼しい装いをするならば、ジャケットやシャツの素材、上着を脱いだときのパンツのシルエットにも気を配りたいもの。【夏のスタイル】と題して、青柳さんにお薦めのアイテムを選んでもらった。
蒸し暑い時期の定番、シアサッカーを選びたい
職場で半そでのワイシャツやポロシャツの着用が許されているとはいえ、時には自分自身で気持ちを引き締めたい、あるいは大事な取引先を訪ねるなど、ジャケットを羽織りたくなる日があるものだ。
その際、通気性や吸湿速乾性に優れるポリエステル系の機能素材のジャケットは確かに便利だが、カジュアルウェアの部類に見なされることもある。
エグゼクティブであるならば、ビジネスクラシックとしてのサマーウールやコットンなど天然素材のジャケットをワードローブに加えておきたい。
自分のためだけでなく、周囲のために見た目を涼しげに
既製服のコレクションとともに、ファブリックメーカーとして名高い「エルメネジルド ゼニア」では、今季、シアサッカーのドレスクロージングを提案している。シアサッカーとは「しじら織り」とも呼ばれる軽量な織り生地のこと。波状の部分と平坦な部分とが交互に並ぶため生地に凹凸があり、通気性を保てるうえ、汗ばんだ肌に張り付きにくいこともあり、夏生地にふさわしい。さらにシアサッカーのジャケットは見た目にも軽く涼しげ。この「見た目に涼しそう」な服こそ周囲への気配りの表れと心得たい。
一般に、シアサッカーはカジュアルな印象になりがちだが「エルメネジルド ゼニア」のジャケットであれば、エグゼクティブにふさわしい上質感をキープできる。夏のビジネスを勝ち抜くに最良の選択肢といえるだろう。
「裏地なし」のジャケットで緊張感を持って仕事にのぞむ
ジャケットは裏地を使わず、一枚仕立てになっている。裏地の役割は、表地を支える芯地を隠したり、芯地無しの場合は裏地そのものが芯となって表地のハリを保ったりするもの。これが一枚仕立てとなると、表地そのもののコシや縫製でハリを保たねばならない。「エルメネジルド ゼニア」のジャケットは、一枚仕立てなのにシルエットが崩れることがなく美しさを維持してくれる点に、確かな技術力を感じさせる。
さて、せっかくピシッとした「裏が無い」ジャケットを羽織るのであれば、ここは一つ裏表なく誠実に仕事と向き合うことを自らの信条とするのもいいだろう。
フォーマル感のあるフラップポケットで一目置かれる
腰ポケットがフラップ仕様の単品ジャケットは、ビジネスウェアのカテゴリーとなる。室内ではフラップを中にしまっておくと、ドレスコードが身についている外国人などから一目置かれることになるだろう。ちなみにフラップの無い切りポケットはよりフォーマル用、パッチ式のポケットはカジュアル用と心得たい。
「Jacket Required(要ジャケット着用)」はグローバルなビジネスシーンでは常識的なドレスコード。外国人と交渉する機会のあるビジネスマンなら、夏でもジャケットを着るビズスタイルを心がけたいものだ。
夏場でもタイ着用が求められる場に出るなら、夏向きネクタイもそろえておきたい。夏の単品ジャケットは、素材の織り感に富むものが多いため、いつものスーツに合わせるシルクのネクタイではVゾーンで浮いてしまいがち。そのためジャケットには素材感を合わせたネクタイ選びがポイントなる。
まずは定番のリネンやコットン、シルクニットのネクタイを。変化をつけたいならフレスコ織りやメッシュなど、凸凹の織り感と透け感があるネクタイも夏らしくていいだろう。裏地を使わないネクタイも軽さを引き立てるもの。表生地だけを7回折り上げる“セッテピエゲ”と呼ばれるネクタイも胸元にふんわりと翻る様子が涼しげだ。シルクのネクタイから選ぶのであれば、白地を多く使ったものなら清涼感が漂う。
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▼ジャケット、シャツ、パンツ、チーフ
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styling:Mitsunori Aoyagi(Hamish)
edit & text:Yasuyuki Ikeda(Zeroyon)
photograph:Tatsuya Ozawa(Studio Mug)