“書く”というより“記す”意志を示せる
重要な書類にサインをするとき、手紙に想いをしたためるとき、あなたはどのような筆記具を使っているだろうか。筆記具を選ぶとき、そこに装うことを忘れていないだろうか。概して、男性に許される宝飾品は少ない。ビジネスにおいては、時計やタイバー、カフリンクスぐらいである。だからこそ、実用一辺倒の筆記具とは一線を画す万年筆の傑作品を手に取り、装いの一部にしてもらいたい。
名品と称えられるパーカーの「DUOFOLD(デュオフォールド)」は、紙の上をすべるような滑らかな書き味に加え、風格を感じる崇高なデザインで、所有する喜びを存分に感じられる。艶やかな黒のアクリライト製のボディに、23金ゴールドプレート仕上げのクリップとトリムの組み合わせは高級感に加え、威厳すら漂う。契約書に記名するときなど、「デュオフォールド」を使えば、信頼に足る人物として認められることだろう。
インクを定期的に交換しなければいけないし、他の筆記具に比べて高価である。手間も時間も省くことがよしとされる今の世の中だが、労力をかけなければそっぽを向いてしまう魅惑的な女性のように、優しく丁寧に扱う必要もある。しかし、定期的にメンテナンスして常に傍らに置いて使い込むほど自分の“癖”に従い馴染んでくる。数年、いや数十年にわたって頼れる秘書のような存在として寄り添ってくれるはずだ。
text: Masato Nachi
photograph: Kazuya Aoki
styling: Yoshiki Araki