「暖かく、かつ上品」両方をかなえるダウンコート
凍てつく寒さが身に堪える時期、ビジネススーツの上にはおるアウターに迷ったことはないだろうか。秋口から着用してきたステンカラーコートは、スタイリッシュだが防寒性という点では心許ない。かといってミドル丈のダウンジャケットは、暖かさは確保できるものの、スーツには不向きなカジュアルすぎる傾向がある。最近では、インナーダウンを中に挟むことも流行っているが、外套を脱いだときの見栄えは品位に欠けるだろう。
その点、トム ブラウンのダウンコートは、十分な暖かさがありながら、無駄を削ぎ落したシルエットで、スーツの上から纏ってもエレガンスを損なうことはない。テーラリングに定評のあるトム ブラウンだけに、男性の体の曲線に美しくフィットし、動きやすさも約束する。生地には上質なカシミヤをふんだんに使い、引っかかりのないなめらかなタッチとしなやかさをもつ。中にグースダウンとフェザーをパックし、暖かい空気をはらんだような着心地も感じられるはず。見た目の量感からは想像できないほどの軽さもあって、ヘヴィになりがちな冬のスタイルとも無縁のビジネスライフが送れそうだ。
高級素材を使っているだけに値は張るが、最高峰の素材、そして、テーラリングに情熱を傾けるトム ブラウンの普遍的な美しさを備えた一着は、ビジネスコートのクラシックになると断言できる。
text:Masato Nachi
photograph:Kazuya Aoki
styling:Yoshiki Araki