色とサイズで威厳を見せる

私の勝負の舞台は株主総会やM&Aの交渉の場です。その際はスキのないファッションを心がけます。ポイントは色とサイズです。スーツの色は紺系統でワイシャツは白。真面目な印象です。服装で突っ込まれる要素は消します。ネクタイは社長に就任して以来、コーポレートカラーの緑がほとんどです。

今日の服装は、シャツこそブルーですが、ほぼ勝負服に近いですね。スーツはダブッとしてもピチッとしすぎても見栄えがよくありません。このスーツは銀座英國屋で仕立てたもので、ジャストフィット。着ていてしっくりときます。これなら大舞台で相手に安心感や信頼感を与えられ、かつ威厳を保てると思います。

もちろん常に堅い服装ばかりしているわけではありません。自社の工場や研究所に出かけて社員と立ち話するときは、あえて髪形を崩すなどスキを見せ、近寄り難さを減らします。アジアへの出張の際は、現地の人たちに合わせて作業服にジャケットを羽織るラフな格好もします。相手に溶け込むことも大事ですから。

ファッションは楽しむ要素も大事です。先日、ライブハウスを貸し切って開いたお客様向けの忘年会には、グリーンのジャケットを着ていきました。どこにいても「私」だとわかる、ちょっとハデな上着です(笑)。

スーツは老舗テーラー「銀座英國屋」で仕立てたもの。社長に就任し、健康に気づかい10キロ近くも減量し、スーツもほとんどを作り直した。ジャストサイズの格好良さを知る佐藤社長らしいエピソードだ

自律型人材の育成が重要

仕事も楽しくやるのが当社のモットー。楽しくなければ続かないし、創造性も発揮できません。そう考えるようになったのはコンサルティング会社を起業し、数年たって社員数が40~50人規模になった頃でした。退職者が多く、どうして辞めるのだろうと悩みました。会社を大きくすることばかり考えていて、スタッフのやりがいや楽しみを実現していなかったとはたと気づいたのです。

私たちの事業領域はケミカルです。この分野で創造性を発揮し、挑戦する中で楽しみややりがいを見いだしてほしいと思っています。私はそれができるのが自律型人材だと定義し、それを増やすことが企業成長に欠かせないと思っています。ただし、自律型になろう、と号令しても意識は簡単に変わりません。そこで最近、見た目から変わる企画を仕掛けました。役員にパーソナルスタイリングコーチングを受けてもらい、ふだんとは違うファッションを社員の前で披露したのです。好評でした。

愛用の逸品~友人からもらった万年筆と和紙の名刺

万年筆は新卒で入社した監査法人を辞め、独立するときに同期の友人からもらいました。「これからサインすることも多くなるだろうから」と。今でも大事な書類にサインするときは使っています。名刺は当社の研究開発・生産拠点がある埼玉県嵐山町の近隣地域の小川和紙(細川紙)製です。ユネスコ無形文化遺産に決まったのをきっかけに作りました。外国人には和紙が珍しいようで、ちょっとした話のネタになります。

佐藤英志/Eiji Sato
太陽ホールディングス代表取締役社長
東京都出身。1992年、中央大学経済学部卒。監査法人に勤務した後、独立。コンサルティング会社経営を経て、2008年に太陽インキ製造(当時)社外取締役に就任。11年から現職。

text:Top Communication
photograph:Sadato Ishiduka
hair & make:RINO