白きロウの表情に重ね合わせるのは……
ビジネスバッグの選び方。それは極論すれば、使う人の好みだ。奇をてらわないデザインであれば、あとは業種やビジネススタイルに合わせて、無数の選択肢から好きにチョイスすればいい。しかし、あなたが年齢やポジションに応じた風格を重んじるのであれば、質の高いレザーバッグが最適解となるだろう。とりわけワールドワイドに活躍するエグゼクティブであるならば、メイドインジャパンの素晴らしさを手に取ってみるのもいいだろう。
1999年生まれのジャパンブランド「GANZO(ガンゾ)」が作るレザーバッグは、“世界最高”を自負する。素材選びから革の扱い方まで、一切の妥協なし。熟練の職人が手がけたブライドルブリーフケースも、そんな謳い文句に恥じない仕上がりだ。まず目に止まるのが、表面に浮かぶ白く趣のある表情。これは、蜜蝋を含んだグリースを丁寧に染み込ませたブライドルレザーを使用することに由来する。革の表面に染み込ませたロウが浮き出ることで、風格ある存在感を放つのだ。本来ブライドルレザーは馬具に使われていたこともあり、ハリとコシが強く堅牢性も十分。ゆえにレザーバッグの中でも、最高峰に位置付けられる。
妥協なきクラフツマンシップは、ディテールにおいても光る。開口部のファスナーには、務歯(むし)まで一つずつ磨き上げた極上の滑らかさと輝きを備えたYKKエクセラファスナーを採用。また、格別の手触りを実現すべく、バッグ内側にはあえて人工スエードを用いた。さらに内部ポケットのレザーパイピングや、バッグ底の鋲打ちも見逃せないポイント。それらすべてが、丁寧な仕事を雄弁に物語るのだ。
もちろん、革製品の醍醐味といえる経年変化も大いに期待できる。マットな革の質感は使い込むうちに独特のツヤを帯び、白いロウと絶妙なマッチングを生み出していく。それは世界に一つだけ、自分だけの表情となっていくはずだ。まるで、経験を積み、白髪が交じり始めたビジネスパーソンのように。そこには、大いなる風格が漂うに違いない。
text:Naoki Masuyama
photograph:Kentaro Makita
styling:Eri Koide