グレーカラーをさらに輝かせる、確かな出自とは?
ブラック、ネイビー、グレー。この3色がビジネススーツにおける基本色となるのは周知の通りである。なかでも最近は、グレーのスーツが注目されているようだ。同時に、黒が絶対定番であったビジネスバッグにもグレーカラーが台頭。ただし、トレンドであるからこそ、その選び方は少々難しくなる。特に、否が応でも周囲からの視線を集めるエグゼクティブであれば、流行に踊らされず、地に足をつけた選択を心がけたい。
そんな向きに相応しいのが、1887年創業のイギリスブランド「スマイソン」のスリムブリーフケースだ。上品な光沢を帯びた美しきスモークグレーは、素材にクロスグレインレザーを採用することに由来。小さな菱形状の格子模様が型押しされたカーフレザーだからこそ、エレガントな質感を備えるのだ。また同素材は、上質な外見とは裏腹に軽量で、細かな傷が目立たなくなるといった実用性にも貢献。見た目だけではない“実のある”提案は、英国王室御用達として知られる老舗の面目躍如といったところか。
実はこのバッグはブランドが誇る「パナマコレクション」の流れを汲み、もともとは1908年に誕生した「パナマダイアリー」に端を発する。クロスグレインレザーの鮮やかなカバーを纏い、羽のように軽い「フェザーウェイトペーパー」を使った世界初の実用的で携帯可能な手帳。そんな出自を知れば、このバッグの持つ重み(軽さ?)はひとしおであろう。
もちろん、バッグとしての形式美も損なわれていない。メインポケット内部には2つのスリップポケットを設け、コットンの裏地は耐久性に優れる。かっちりとしたスクエアなフォルムは、まるで使う人の誠実さを物語るかのようだ。さらには着脱&長さ調整が可能なショルダーベルト、キャリーバッグに装着できるレザーガイドでさまざまなシーンに対応。忙しい現代のビジネスパーソンそれぞれの日常に、しっかりと寄り添ってくれる。
外見と機能の両面で、トレンドと伝統を感じさせるグレーのビジネスバッグ。流行に流されず、とはいえ逆らいもしない。歳を重ねるにつれ、そんな柔軟さがより必要になってくるのではないだろうか。
text:Naoki Masuyama
photograph:Kentaro Makita
styling:Eri Koide