ダブルモンクストラップの原点にして最高峰
2本のストラップでホールドするダブルモンクストラップは、今でこそビジネスシューズにおけるベーシックデザインとして認識されているが、始まりは希代の靴職人であり、2代目ジョンロブの責任者であったウィリアム・ロブ氏が手掛けた一足に端を発する。1948年頃、洒落者として名を馳せていた英国のウィンザー公が同氏にビスポークを依頼したのがきっかけと言われている。飛行士が履くアビエイターブーツから着想を得て、ウィンザー公のために仕立てた靴こそダブルモンクの原点であり、後に既成靴として生みの親の名を冠したのが「ウィリアム」である。
1982年に既成靴として販売された「ウィリアム」だが、ジョンロブの矜持を受け継ぎ、今なお最高峰のクオリティを誇る。素材には一頭の牛から限られた量しか採取できない最高ランクのフルグインレザーを使用し、アッパー、インソール、シャンク(靴底の中間層の素材)、スティフナー(踵の芯)など、見えない箇所も含めてほぼすべてのパーツが革で作られているので、革が呼吸し自然と足の形に馴染んでいく。そして、最高級の素材を活かして、最高峰の靴を仕上げるのが、ジョンロブの熟達した靴職人たち。微細な傷も見逃さないため自然光のなかで行なわれる革の裁断、ミリ単位のズレすら許さない精緻な縫製など、190もの工程を経て、約4週間をかけて一足を作り上げている。
完成された造形美と、極上のフィット感をもつダブルモンクの「ウィリアム」に足を入れれば、仕事も人生も、自然と良い方へと向かうに違いない。
text:Masato Nachi
photograph:Kazuya Aoki
styling:Yoshiki Araki