“用の美”を感じさせるタイムレスなデザイン
世に出回るたくさんの物の中から、あなたが物を選ぶ基準は何だろうか。星の数ほどありそうな物選びの理由のひとつに「これを持っておけば、一目置かれるかもしれない」というものがあるだろう。ひと目で高級品と分かるアイコン、トレンドを取り入れたタイムリーなデザインに、人は飛びつきがちだからだ。しかし、本物の価値を知るあなたなら、そんな俗っぽい色気とは無縁であることだろう。
イタリアの至宝、ヴァレクストラのブリーフバッグには、声高に主張するものは一切ない。無駄を排して、機能美を追求したデザインは、控えめでエレガント。ロゴはジップのスライダーや内側に小さく入っているだけだ。それは職人の手によって作られたアイテムこそが特徴であり、魅力であることを表している。そして、触れずにはいられないのが、「イタリアのエルメス」と称されるほど最高品質の革を用いていること。厳しい目で選別された革を特別なマシンでなめし、ラムスキンと同じ柔らかさまで仕上げている。使い込むほどに柔らかさが増していき、しっくりと手に馴染んでいくことだろう。いわずもがな、機能面にも抜かりはない。外側にはジッパー付きコンパートメントを配し、内側にはノートPCを保護する薄いパッドやA5サイズのフラップポケットが4つ付くなど、現代的な使い勝手にも配慮されている。
主張の強いロゴやいたずらに人心を惑わすブランド戦略には走らない。そのような反時代的な構えを守り続けてきた頑ななあり方こそ、ヴァレクストラがビジネス紳士の資質にふさわしい革製品とされ、憧れをかきたてる由縁でもあるだろう。
text:Masato Nachi
photograph:Kazuya Aoki
styling:Yoshiki Araki