第三回「休日に穿くデニムパンツ問題」

「スーツスタイルはイケてるのに休日に会うと残念な人、あれはどうして?」

【K】私だって人のことは言えないのよ。若い頃、BBQにロングブーツを履いていって、ずっとネタにされた女だもん。「次はハイヒール履いてくるぞ!」なんて言われてさ。仕方ないじゃない、当時スニーカーを持っていなかったんだから。

【M】一体、何の話をしているの?(笑)

【A】ほら、昨日、私とクミはBBQに行って来たでしょ? でもね、なんと、ダンディで有名なTさんのカジュアルスタイルが意外にもイケてなくて……(笑)

【M】え? T部長のこと?

【K】そう。いつも仕立ての良いスーツやワイシャツを品良くビシッと着ている紳士的イメージが強いでしょ? それが昨日は、どういう訳か、膝が丸見えのダメージデニムを穿いていらして。

【A】先の尖がったブーツや、シャツのボタンを開け過ぎていたのも気になった。

【M】え? あのT部長が? でもワーカーホリックや仕事大好き人間にありがちな話ね。ずいぶん前にカジュアルスタイルが止まってしまっているタイプ。たぶん、ダメージデニムパンツが流行の最先端になった6、7年前に購入されたものかも。あの頃の自分と変わらず今も似合っていると思っているのね。

【K】Tさんはカジュアルに関しては、時間が止まっているのね。会社が躍進したのは、ここ数年だし、遊ぶ暇なんてなかったんだろうな。それにしてもちょっとイケてなかったな。

【A】マリさん、この話にはまだ続きがあるのよ。S銀行のYさんが、なんと昨日は輝いていて。肉を焼く姿が、もうイケメン過ぎて女性陣は肉を食べるフリをして熱い視線を送っていたわ。あの人そんなにお洒落だった? って思ったくらい。

【K】そうそう! びっくりした。

【M】それは興味あるわね。どんなコーディネートをされていたの?

【K】特に奇をてらったお洒落ではないの。少し余裕のあるリジットデニムにTシャツをゆるっと着て、スニーカー履いてるだけ。パッと見は普通なんだけど、なんだか素敵だったのよね。40代なのにこんなにデニムスタイルが似合う人がいるんだって、つい見とれちゃった。

【A】いつものスーツスタイルも清潔感と信頼感に溢れているけど、お仕事柄、無難にまとめられている感じでしょ? でも昨日は別人級の衝撃があったよね。見方が変わっちゃったもん。

【M】さすがね、Yさん。身に付けている名刺入れやお財布がニクいところを選んでいるって思っていたのよね。小物に気を遣える人って絶対にお洒落が上手いのよ。やっぱりね~。でも改めて、休日のファッションで平日のイメージが一変するってことがわかったわね。気をつけてほしいわね。

大人が穿くべきデニムパンツとは

SIVIGLIA/CORE リジッドデニム ジーンズ 2万7000円(税別)。「SIVIGLIAは抜群にシルエットが綺麗。このデニムパンツはストレートのようで緩やかなテーパードになっています。脚のラインを拾わず穿け、尚且つしっかり綺麗な脚のラインを作ります。リジットデニム(ノンウォッシュでノンストレッチ)であればカジュアル過ぎず、シャツやジャケットとも合わせやすいのでさまざまなシーンで活躍してくれますよ」(ビームス 安武さん)
「このデニムパンツのデザインは前身頃が後ろ身頃より短くなっていて後ろでホールドされるので穿き心地が良いんです。多少お腹が気になる人も、ウエスト位置がお腹の下になりますので綺麗に穿いていただけると思います」(ビームス 安武さん)
「大人がデニムパンツを穿く場合は、丈をきちんと直すことがとても重要。丈の長さはトレンドが出やすいポイントなんですよ。良い靴を履いても、それを映えさせるかどうかは丈次第(笑)。ロールアップするなら、さりげなく少しだけ」(ビームス 安武さん)

【M】でも、Yさんって、そんなにスタイルの良い方だったかしら。きっと脚のラインが綺麗に見えるデニムパンツを吟味されているんでしょうね。リジットデニムはノンウォッシュで伸縮性がないんだけど、色が濃い分下半身をすっきりと見せてくれるのよね。だから大人が選ぶデニムパンツとしては正解だと思うわ。

【K】淡色だと下半身が膨張して見えるからね。それに軽そう……(笑)。私も最近、淡色を穿くと「なんか違う」って思うようになったな。

【A】サーファーは濃い色より淡色を穿いているイメージだなぁ。日焼けして引き締まった身体だと、ダメージデニムでさえワイルドな感じでキマリそうじゃない?

【K】それ、そのままを最近雑誌で見たわ。サーファーが擦り切れた淡色のデニムパンツを穿いて海をバッグにサーフボードを持って笑っていたの。印象的だったから覚えてる。今でも波乗りが趣味の40代はちょっと注意だね。雑誌のデニムパンツのイメージをそのまんま真似しても、もう難しいからね。若いころの自分のイメージのままで履くのも危険よね。

【M】そうね、自分の魅力を最大限に表現してくれるものに出会うには、まず自分のことを知ることが大事。体型もかなり変わっているしね。あるとき突然似合わなくなる。それを指摘する人もいないからね。大人になったら、脚のシルエットが出ないちょっとゆとりのあるサイズを選ぶのがポイント。太ももはそれなりに余裕があって、ふくらはぎの両サイドはひとつまみ掴めるぐらいがちょうどいいかも。テーパードというシルエットね。

【A】確かに、お尻も足の形も分かっちゃうようなピタッとしたスリムはちょっと違うよね。拒否反応でちゃいそう(笑)

【K】それに、ラフさとかこなれ感で大人の余裕も感じさせてほしいな。Yさんみたいに、普通にリラックスして穿いているのだけれど、なんだかカッコいいっていうのがベスト。裾をちょっとだけロールアップしていたのもさりげなくて素敵だった。

【A】そうね、素足の足首がチラっと見える丈も良かったわ。

【M】そう、着丈も大事よ。ジャストサイズよりほんの少し短いだけでも足が短く見えてしまうから。そんなの勿体ないじゃない? 今はクルクル2回以上折って調整するのもなしよ(笑)。ひと折りで2cm程度かな。それ以上はダメ。

【A】買ったまんまでお直ししていない人みたいだもんね(笑)

【M】そう、なんだか野暮ったいじゃない? 裾をたるませて穿いている人もいるけど、それをすると本来のシルエットが崩れてしまう。裾のお直しは絶対に必要よ。どんなパンツも、デザインを選んで終わりではなくて、裾のお直しまで気を抜かないでほしいわ。

【K】デニムパンツが似合っていない人って、サイズを間違えて穿いていることもありそうね。

「デニムが苦手な人に薦めたいデニムパンツ」

GTA/HERRICK デニム 2プリーツスラックス 2万8000円(税込)。「デニムパンツが苦手な方は、センタープレスの入ったこちらを一度お試しいただきたいですね。デニムのリラックス感と、エレガントなシルエット、クラシカルデザインが絶妙に融合してラグジュアリーな雰囲気まで漂わせてしまうパンツです(笑)。ビジネスパンツと同じように抵抗なく穿いていただけるかと」(ビームス 安武さん)
「このクラシックデザインはウエスト周りが気になる方にもおすすめです。2プリーツでサイドアジャスターが付いたベルトレスですので、パンツ側でウエストサイズの調整が可能です。」(ビームス 安武さん)

【A】でもさ、お腹がふくよかになり過ぎちゃった人の場合、はなからデニムパンツは自分には似合わないって思い込んでいることもありそうじゃない?

【M】もちろん、多くのブランドがその辺のこと考えて作っているわ。ファッションはモデルのためだけにあるものではないでしょう? アジャスターが付いていたり、腰回りにゆとりを持たせながら、ラインをすっきりと見せるパンツが色々あるのよね。

【K】「きちんとした大人はデニムパンツなんて穿かない」なんて言っている人もいたけど、そんなことないのよね。品の良いスタイルを好まれる方には、ジャケットに合うデニムパンツを紹介したいな。大人にしか出せない魅力を漂わせられるようになったらいいよね。

【M】そうね。あるわよ。ドレッシーなデニムパンツが(笑)。素材も従来のデニム素材ではなく、少しソフトだったりして。そういう良いものを履いていると、ファッションを知っているというオーラがでるのよ。

【A】ドレッシーなデニムパンツ? ドレッシーとデニムは真逆だよね(笑)

【K】ファッションの可能性は無限大ってことね。どのアイテムも適当に手に取るのを止めれば、いくらでも素敵になれそう。スーツだけではなく、デニム改革もそろそろ始めてほしいわね(笑)

【今回ご協力いただいた方】

ビームス プレス 安武俊宏氏
豊富な知識と抜群のセンスに、撮影スタッフ一同魅了されました。

【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】

<委員会設立の趣旨>
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。

re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。

マリ(中央)
re*colabo代表。ファション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。

クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。

アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。

photo:Ayako Nakamura
text:re*colabo