第四回「休日カジュアル問題」

「こういうとき、スーツってどうなの?」

【K】あ~気持ちがいい! 屋上のビアガーデンの季節になってきたわね!

【M】初夏の夜空の下、銀座を一望できるラグジュアリーな空間で週末にビールを楽しむ……贅沢だわ~。それにしてもクミ、屋上のビアガーデンってめちゃくちゃ昭和よね(笑)。今はルーフトップガーデンっていうのよ。意味は同じなんだけどね。

【A】そうそう、横文字にするだけでも印象ずいぶん違うよね。それに最近はかなりラグジュアリーな雰囲気になって大人でも楽しめるからいいわよね。ここは銀座や有楽町方面の夜景がとってもきれいだし、極上のひと時ね……って、夜景を見渡していたら、素敵な人を発見!

【K】ルーフトップガーデン……時代についていかねば! でもこういう素敵な場所には魅力的な人も集まってくるっていうことよね。素敵な人ってVネックニットを着ている人でしょ? 女性好みのパープルの色をチョイスして、それをサラッと嫌味なく着こなしているあたり、エグゼクティブな匂いがプンプンするわ。

【M】週末、ちょっと洒落た場所に行くとなると、コーディネートに悩んだあげく、スーツもしくは、クールビズでやってくる男性は多いわよね。そんな中で、彼のコーディネートは完璧に近いわ。

【A】スーツはファッションに自信がなくても、それなりに見える。でも、週末カジュアルスタイルは着こなしのルールが曖昧だし、TPOも考えなくてはいけないじゃない。その服を選んだ背景や理由によっては、着る人の配慮の度合いが計られてしまう……そう思うと、なかなか難しいのよね。

【M】アイテムには、何かしら象徴するイメージがあるじゃない。例えばジャケットは子供が着ることはあまりないから、大人の象徴よね。白いパンツは清潔感の象徴。汚れが付きやすい下半身に、汚れが目立ちやすいホワイトをあえてもってくるのだから、清潔さに自信があるという印象をつけられる。

【K】そういった象徴するイメージをまとうことで、イメージをカスタムしてみせるというのも、デキる男の私服選びよね。

【A】逆に、普段パリッとしたスーツを着ている30代のビジネスマンが、年齢にそぐわない子供っぽいカジュアル服で現れたらマイナスの印象にもなりかねないということ。

【M】そうね、もう一度見て、彼の装い。パープルという色のチョイスもお見事だけど、Vネックの深さも絶妙なのよね! 深すぎると、ちょっと色気出しすぎだし、浅すぎると首が変に詰まって顔が大きく見えてしまうこともあるの。でもそのどちらの印象も与えない、程よく浅めのVネックデザインが見事よ。

【K】上質なTシャツをさらりと着るなんていうのもすてきじゃない?

【M】そうね、それもありね。でも、Tシャツはトレンドだから着たいのはわかるけど、ここは銀座。もう少し品よくするのならば、やはりニットが正解かな。

【A】なるほど。彼とは面識が全くないけれども、TPOをきちんとわきまえた人で、きっと仕事のできる人なんだろうな~という印象をすでに受けてるものね。

【M】彼に似合っているということも重要なポイントよ。いくらきれいな色でも、似合わない色を着ていたらマイナスよね。自分に合うものをわかっている=自分を深く理解しているということ。装いは多くの情報をくれる。だからこそ、どんな装いをするかっていうのは、とっても重要なポイントになってくるのよね。ビジネスでも同じ。

【K】服装への気遣いの有無に「仕事のIQ」が如実に表れるということなのね。勉強になる! なんだかお酒も進むわね、もう一杯カクテル頼んじゃお!

【A】【M】賛成!

「エグゼクティブが愛用すべき一枚とは」

【M】私たちデザインのことばかり話してきたけど、素材の良さも、とっても重要なのよね。

【A】確かに、彼のニットを見て! 質がよさそうよ。カシミヤかしら?

【K】カシミヤだけじゃないわね。あの艶はシルクも入っているとみたわ。

【M】鋭いわね、多分シルクも入っているわ。初夏でも夜はずいぶん涼しくなるから、薄手のカシミヤは重宝するんだけど、安いカシミヤは劣化してくると、毛羽だってしまうの。だから毛玉ができやすいのよね。かたや値段の張る高級カシミヤは、毛玉にならないのは勿論のこと、使えば使うほど柔らかくなって風合いが良くなるの。買ったばかりの時の品のいい光沢感は残しつつ、柔らかさが増すから、着心地が一層よくなるのよね。

【A】セーターの毛玉は一番だらしなくみえるわよね。毛玉取りブラシ必須!

【K】一流といわれる人って、必ずといっていいほど、長年愛用しているものがあるわよね。そういう方たちって、スーツや靴、カバンを買う時、20年後も立派に使える愛用品になるものを大切にじっくり選んでいると思うの。是非、洋服もそんな姿勢で選んでほしいな。

【M】自分に合ったいいものを大切に使い、長い間愛用することは、長期的な人間関係も大切にするっていう隠れたメッセージを相手に与えられると思うの。傷んだら修復しながら大切に使うことって、今のエコの時代だからではなくその人の本質も見えてきたりするからね。女性なんて特にそういうのチェックするじゃない? 仕事でも自分のこと大切にしてくれるのか……なんて瞬時に見極めたりするし。私服から読み取れる情報って想像以上に沢山あるのよね。

【A】そうそう。だから長く愛用するには素材だけじゃなく、シルエット選びも大切。あまりに流行りを追ったデザインだと歳を重ねるにつれて変化していく体型にも不釣り合いになってくるし。それを無理に着ようとすると、自分に合ってないものをチョイスしているということになるからね。ハイブランドこそ、定番の形っていうものを持っている。それって、長く愛してほしいという思いがあるからなのよね。

【M】彼のニットも見て。サイズ感はタイト過ぎず、ゆったりと着ているんだけれども、ダブつきはなく、シルエットもきれいよね。着丈も長すぎず、短すぎずちょうどいいバランス。自分のサイズをちゃんとわかってるというのが見える。伸びるからなんていって、小さめのサイズを買う人もいるけど、ニットはタイトに着こなすよりも、ゆったりと自然な感じで着るほうが、年齢的にもいいし、何より心地良さそうに見えていいわよね。

【K】ニットをトップスに持ってきたら、パンツはどんなものがいいのかしら? ニット単体だけで選んだら、迷わず彼の着ているきれいな色のパープルを選びたいところだけど、なかなか男性には合わせるのが難しいんじゃないかしら?

【A】トップスに品があって素敵だから、意外とデニムでもきれいめに決まるし、白いパンツでも色が映えていいかもしれない! だって、実際に例の彼は、デニムに合わせているわよ。

【K】本当ね、白パンツにスリッポンなんていうのも、すごくお洒落で素敵。それに、休日だったらスニーカーと合わせてもいいわよね。

【M】そう、意外とそんなに難しくないのよ! だからぜひ挑戦してほしいものよね。

【今回ご協力いただいた方】

Cruciani 銀座店 店長 松井健二さん
上質でシンプルなニットをさらりと着こなす装いがお見事! 20分ほどの取材ではあったが、物腰の柔らかさと、商品を手に取って広げる際の美しい所作が品の良さを感じさせる。商品知識の豊富さと自らの経験も交えながらの解説がわかりやすく、とても印象的。

【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】

<委員会設立の趣旨>
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。

re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。

マリ(中央)
re*colabo代表。ファション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。

クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。

アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。

photo:Ayako Nakamura
text:re*colabo