エキゾチックレザーの色気のある風貌
悪目立ちしないこと。これは紳士にとって重要なことだが、一方、無難には退屈がつきまとう。退屈もまた、生き馬の目を抜くビジネスジェンツにとっては忌避すべきものである。代わり映えしないスーツスタイルに、密かな愉悦を取り入れてもいいだろう。
たとえば、贅沢素材を採用したこんなロングウォレット。遠目からはシボが美しいレザーに見えるが、その実、粒感と艶やかな光沢が特徴のリザードを纏っている。こんなエキゾチックレザー(爬虫類・鳥類などの特殊な皮革)を得意とするのが、フランスが誇るレザーブランド、カミーユ・フォルネ。1945年にフランスの北部ピカルディ地方で創業したカミーユ・フォルネは、名だたる高級時計メゾンのベルト作りを通して研鑽を積み、“クチュール・セリエ”と呼ばれる芸術的な技法を活かし、伝統とトレンドを意識した時計ベルトやレザーグッズを展開している。とりわけ、エキゾチックレザーへの造詣が深く、卓越したノウハウで仕上げられる製品は世界中の革好きを虜にしている。
ロングウォレットに用いられたリザードは、希少価値が高く入手が困難になっている革を贅沢に使用してる。カミーユ・フォルネの熟達した職人が緻密な作業で時間をかけて作り上げているので、シンプルながらラグジュアリーな風貌を湛える。希少な皮革を扱い、伝統的な技術と革新的な精神を継承するレザーブランドの姿勢は、ものが出尽くした時代における独創性とは何かを教えてくれる。
text:Masato Nachi
photograph:Kazuya Aoki
styling:Yoshiki Araki