ドレス靴のような品格と涼感を併せもつ
「他人に不快感を与えない」ことは紳士の条件の一つ。いくらオフの場面においても、気を抜いた格好では品位を保てず、下品に映る可能性もある。特にサンダルやショートパンツを着用する機会が多くなる夏こそ、涼感や上品さを感じさせながら夏の時間を過ごすことができるというのも、紳士の資質のひとつだろう。そんなときに使える最適なシューズ、とりわけ夏の必須アイテムとして愛されているのが、グルカサンダルである。
グルカサンダルとは、19世紀に旧英国領インド軍に属した、複数のネパール山岳民族による傭兵部隊であるグルカ兵に支給された軍靴を起源とする革のサンダル。甲の部分がレザーテープを編み込んだような構造になっており、トゥとヒールカップは革靴のようにクローズ構造になっているのが特徴で、サンダルの通気性とドレス靴のような見た目とフィット感を備えたハイブリッドな一足だ。
フラテッリ ジャコメッティの一足は、今日のグルカサンダルブームを牽引してきたモデルで、正統でエレガンスな見た目と手作業による高いクオリティで他の追随を許さない。フランスの名タンナリー、デュプイ社の型押しカーフを使用し、熟練の職人の手によって丁寧なアッパー縫製やコバの爪だしなどの手間が加えられている。夏場にむくむ足を想定してワイズを広めにとったバランス設計も、このブランドらしい行き届いた配慮である。素足はもちろんのこと、靴下と合わせても違和感はないので、夏場のドレスシューズの代替としてふさわしいサンダルといえよう。
text:Masato Nachi
photograph:Kazuya Aoki
styling:Yoshiki Araki