第十三回「本質が見える小物くたびれ問題」

「シンプルな装いの中に仕掛けられた、こだわりの“小物”が、あなたの格を一気に上げる」

【M】この電車に乗れば、ひとまず安心。クライアント先には時間に余裕をもって到着できそうね。

電車に乗り込んだ瞬間に男性とぶつかる。
ガタン!

【A】ごめんなさい、ぶつかってしまって。はい、携帯落とされましたよ。

【男性】こちらこそ、すみません。ありがとうございます。

立ち去る男性。

【M】ちょっと、ちょっと、なかなか素敵なビジネスマンだったわね。

【K】さすが、チェックしてるわね。私もそう思ったわ。それにしても見た? あの携帯ケースいいセンスだった。

【A】もちろん見たわよ。すごくシンプルな感じのケースね。色はグレーで落ち着いたいい色だったわ。とてもシンプルなケースだけど、素材は何かしら? とっても上質そうだったわ。

【K】スーツをバッチリ決めたつもりでも、意外とおろそかになりがちなのが小物よね。でも実は女性って、男性の小物からセンスを推し量るところがあるわよね。

【M】装いのことって、雑誌とかを見れば頭の先からつま先までのコーディネートが掲載されているじゃない。でもファッションに疎い人でも、センス良く見せることができるのが小物なの。財布、名刺入れ、メガネ、スマホケース、小物に関するコーディネート的な記事ってあまりないから服も含めたトータルでは考えにくいかもしれないけど。もちろん、新商品やトレンドのデザイン紹介なんていう記事はあるけどね。

【A】男性だけじゃなくて、女性にもいえることだけど、小物でトレンドに走りすぎたものを選んでいるのは、やはり年齢によっては少し“痛い”し、ミーハーな印象よね。逆に古びた小物を持っていると清潔感も感じられないし、あまり装いに興味がないんだと思ってしまう。万が一、持ち主の男性が上質なスーツを着ていても、持っている小物で一気に印象が下落してしまうこともあるから意外に大切。

【K】小物選びこそ、その人の本質がみえるということなのよ!

【M】シンプルな装いをしながらも、こだわりの小物に目が惹かれることってあるわよね。それって実は装いの細部に気を配っている証だし、さらにいえば、「それはどこのブランドのものですか?」なんて、女性との会話のきっかけになることもあるしね。自分を主張するアイテムとして言われるネクタイだけど、それと同じくらい目立つアイテムではあるのよね。

「もはや自己表現の大切なアイテムと化した“スマホケース”」

T・MBH(ティーエムビーエイチ)/iPhone8・7カバー ヌバッククロコダイル
T・MBH(ティーエムビーエイチ)/iPhone8・7カバー ヌバッククロコダイル 4万4000円(税別)。「岡本拓也氏が手掛ける日本が誇る革製品ブランドで、色気のある革製品を作りたい、そして他にないモノを作りたいという理を持っています。T・MBHの商品の多くは、今までに見た事のないモノばかりです。ただ眺める為の製品ではなく、実用品としての使いやすさを追求して作られています。表面を起毛させた稀少なヌバッククロコダイルを使用しています。専用樹脂は樹脂メーカーと共同開発することにより、革に吊りこむ前提で製作。内装にノブレッサカーフを貼り、高級感と装着感を飛躍的に向上させています。革は使う部位を吟味し、厚さを調整してから張り込み、コバやカーブの部分は良く砥がれた革包丁により、手漉きにて調整を行っているほど。ボタンの凹みやカメラのレンズ部分のコバも丁寧に磨き上げられています。本体裏面に被せるようにはめ込む装着リアバンパー方式で、樹脂と一体化した剥がれにくい製品で長く愛用することができます」(STRASBURGO 銀座店メンズ店長 山崎さん)

【A】そういえば、マリ姉、スマホケース変えたのね。以前は二つ折りのデザインだったけど、今度はシンプルなケースで、色といい、素材感といいすごく素敵!

【M】そうなの、このケースはセミオーダーで、何種類かの革と色を好みで選べるのよ。デザインは一種類だけなんだけどね。私はクロコダイル×ネイビーで作ってみたの。メンズライクなんだけどシックだからとっても気に入っているの。スマホって頻繁に出し入れするし、常に身の回りに置いておくアイテムじゃない。だから、見る度に気分が上がるものを選んだの。

【A】シンプルでどんなスタイルにもマッチするデザインが、トレンドに左右されない“自分の似合う”を分かっているマリ姉にぴったりよ。日常の中で他人のスマホケースって目にする機会多いわよね。電車の中でなんか、みんなスマホをいじっているから、どんなケースを付けているかチェックしちゃうわ。

【M】その人のセンスや価値観もうつしだしているのよね。

【K】そうね、素敵な装いの男性が、派手な装飾で明らかにケースとスマホの主従関係が逆転してしまっているようなものを付けているのを見ると、きっと、仕事のときにも、どうでもいい部分にばかり無駄にこだわって納期を遅らせてきそうなタイプ……なんて勝手な妄想をしてしまう。

【M】わかる! そういう人とは仕事したくないわね。その分析、意外と当たっているのかもしれない。たかがスマホケース、されどスマホケース。もはや、スマホケースは自己表現の大切なアイテムなのよね。

「ビジネスマンの相棒“名刺入れ”。初対面で女性が注視するナンバーワン小物」

T・MBH/葉合せ名刺入れ クロコダイル
T・MBH/葉合せ名刺入れ クロコダイル 5万4000円(税別)。「クロコダイルの最高峰とされるポロサスクロコダイルの革を染色した、使い込むほどに増す艶が魅力となっていく名刺入れです。革は一枚一枚、革小物司・岡本拓也氏が吟味して仕入れており、浅草橋工房にてオールハンドメイドで製作されています。長年に渡り磨き上げた、優れた職人技術がなければ生み出せない革小物です」(STRASBURGO 銀座店メンズ店長 山崎さん)

【K】ビジネスマンとして欠かせないアイテムといったら、名刺入れよね。でも、意外と財布ほどこだわりを持っていない人って多いわよね。

【A】確かに! 使い込んでいてエイジングのかかった革製の名刺入れだったらいいけど、ただただ年季が入りまくっている……ステッチがほつれていたりなんてこともあるわよね。

【M】名刺入れって、実は一番持ち主のビジネスに対する姿勢を知らない間に公開しているアイテムなのよ。エグゼクティブの人は本当に注意が必要よね。偉そうなこと言ってもビジネスセンスまでバレてしまうから。名刺を出すって、いわゆる初対面の本当に最初。いろんなところからその人の情報を瞬間にキャッチするには、一瞬しか現れないむしろ“素”の部分が垣間見えるものでもあるのよ。

【K】深いわ~。そこまで瞬間に見るなんて……。という私も結構見ちゃってるかも。自然にね。好みの革を選び、色も鞄などとは違って、ブラック、ブラウン以外にも豊富なカラーがあるし、デザインも二つ折りもあるし、定期入れみたいなタイプもある。イニシャリングサービスを利用すれば、自分だけのオリジナル感が増したりするからね。

【A】装いとのコーディネートをそんなに考える必要がないから、思いっきり自分好みをだすことができるのね。名刺入れ1つでも、自分が良いと思うものを持つことで自分自身をブランディングしているのね。

【M】名刺入れは女性だけではなく、クライアント先の人、男性だってチェックしている人はいるはずよ。せっかくなら名刺入れさえも魅力をアピールする武器にしてみる。名刺入れは、そんな気持ちで選ぶべきアイテムなのよね。

「名刺でパンパン。入れすぎでボロボロ……」

【K】名刺交換したときに、名刺入れが、自分の名刺だけじゃなく、以前交換した人達の名刺でパンパンっていう人がいたの。とても素敵な人だったけど、整理が出来ない人という印象がついてしまった。

【A】私も、その方のこと覚えているわ。いつもパンパンな状態だからなのか、ステッチ部分の色がほつれてしまっていた。質のいい革が使われた名刺入れみたいだったから、まめにメンテナンスすれば、長く愛用できそうなものを、大切に扱っていないというのも、あまりいい印象には繋がらないわよね。

【M】ちょっと二人とも、どれだけ小物チェックしているのよ(笑)。でも、名刺もお財布もこまめに整理するのがビジネスマンの鉄則。薄い名刺入れにさらりと数枚名刺を持ってビジネスしてほしいわ。

「こんなアイテムだってある! 小物の世界は奥深い。」

T・MBH/携帯用靴ベラ 蹴菱(けびし)ナイルクロコダイル
T・MBH/携帯用靴ベラ 蹴菱(けびし)ナイルクロコダイル 2万8000円(税別)。「中にペニー(独ユーロのコイン)を仕込ませた携帯用靴ベラです。使用する時に、踵のカーブに沿って、携帯する際にも身体に沿って変形してくれるので決して邪魔になりません。仕込ませているコインの効果で重量感があり、持っていて楽しくなるアイテムです。とても特殊な形状で新しいコンセプトの靴ベラです」(STRASBURGO 銀座店メンズ店長 山崎さん)

【K】小物って、本当に色々種類あるじゃない? この前とても珍しいアイテムを持っている方がいたの。なんと『靴ベラ』。それもクロコダイルで出来ていたのよ!

【A】まず、マイ靴ベラを持ち歩くこと自体がいい! 接待や商談で意外と靴を脱いだり履いたりすることがあるじゃない。靴を脱いだときはさっそうと現れた「デキるビジネスマン」風だった人が、帰り際につま先を床に打ち付けるような履き方をされると、なんとなく最初の印象よりも下降気味になるしね。

【K】アキ、一流は去り際も一流であるために靴ベラを持ち歩くのね!

【M】靴ベラというと、なんだか家庭感のある匂いがするけど、最近では日本でもシューホーンと呼ばれるようになっているのを知っている? できる営業マンや、一流のエグゼクティブはこだわりのシューホーンを持っているの。ビジネスマンのお守り的なアイテムに変わる日も近いわね。

革の色サンプル
「今回ご紹介した、iPhoneケースや葉合わせアイテムの名刺入れに利用できる『レザーリーフ オーダーシステム』を用意しています。製品を作る前の革を選んでいただき、その革を使用して製品を作ることができるシステムです。レザーリーフを実際に見て選ぶことが可能なので、安心して注文していただけます。自分だけの特別なアイテムをつくることができ、愛着が湧くこと間違いなしです」(STRASBURGO 銀座店メンズ店長 山崎さん)

【A】携帯ケースも、シューホーンも、革を選んで自分だけの特別なアイテムを作れるブランドがあるのよ。そういうところで作ると自分らしさを表現できそうね。

【K】なかには面白い革もあるの。耐水性・耐摩耗性に優れるエレファント(象)、薄さの割に強度に優れるリザード(トカゲ)、メンテナンスフリー性に優れソフトな感触のオーストリッチ(ダチョウ)、それから見た目に反して柔らかくて強くエイジングもきれいに出る、革の王様クロコダイルと、その種類は実用面で見事に的を射ているものばかりなのよ。

【M】デザイン自体は極めてシンプルなのだけれども、素材にこだわる。まさに大人のできる男よね! 当分、出会う男性たちの小物から目が離せなさそうよ(笑)

【今回ご協力いただいた方】

STRASBURGO 銀座店メンズ店長 山崎誠人さん
長身でクールな印象の山崎さん。仕立てのいいスーツを美しく着こなした立ち姿が印象的。

【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】

<委員会設立の趣旨>
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。

re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。

マリ(中央)
re*colabo代表。ファション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。

クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。

アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。

photograph:Ayako Nakamura
text:re*colabo