第十二回「靴で見られるビジネスマンの素質問題」
「超一流の靴は、口ほどに物を言う?」
【A】クミ~、ここのお食事とっても美味しい! 素敵なレストランを紹介してくれて本当にありがとう。
【K】本当? よかった。私のお気に入りの店を気に入ってくれて嬉しい! 居心地のいい空間で気の置けない仲間と美味しいお料理を食べるひととき……最高だわ! ね~待ち合わせの時から気になっていたんだけど、マリ姉の靴ってマノロじゃない?
【M】ウフフ……気づいたかしら? 美しいパンプスをつくる筆頭ブランド、ロンドン生まれのMANOLO BLAHNIK(マノロ ブラニク)よ! この完璧なフォルムは、成熟した大人の女のための靴。この靴に足を入れるたび、女に生まれた幸せを実感することが出来る……なんて、ちと大げさではあるかもしれないけど、やっぱり履くと背筋がシャキッとするわ~。
【K】すっごく素敵~!
【A】ねえ、知っている? ヨーロッパにはこんな言葉があるのよ「良い靴を履きなさい。良い靴は履き主を良い場所へ連れていってくれる」。女性にとってはマノロのような靴がワンランク上の女性を演出してくれて、新たな出会いを生み、良い場所に連れて行ってくれる……。
【K】男性の場合は、汚れていたり、傷だらけの靴を履いていると「気配りができない」とか「余裕が感じられない」とか、様々な印象が靴一つで決まってしまうじゃない。ビジネスマンにとって、良い場所に連れて行ってくれる“良い靴”ってどんな一足かしら?
【M】普通の靴は履けば履くほど、ダメージって増えるはずなんだけど、良い革やデザイン、高い技術力を持ったものを選べば、ダメージではなく“味”になるの。その一足を丁寧に手入れやメンテナンスをしながら長く履き続けることによって出た“味”は見る人が見れば、新品でピカピカしている靴との違いは一目瞭然なはず。
【K】そんな風に、大切に磨きあげながら、味のある靴に育て上げていってほしい……(笑)。そういう男性には清潔感はもちろんのこと誠実さまで感じてしまうわ。
【M】足元で男性の格が決まるといっても過言ではないかもしれないわ。そしてその印象が新たな出会いやビジネスチャンスを運んでくれる。まさに、“良い靴”は履く人をより高いステージへと引き上げてくれるのよね。
「愛される理由。それは伝統に固執せず、常に進化しようとする姿勢」
【K】男性にとって“良い靴”が手に入る憧れのブランドと言ったら……。
【K】&【A】ジョンロブ!
【M】伝統的な英国靴って「優れた道具」として作られるものであり、時代が移り変わっても不変の品質とディティールを持ち続けていることが特徴よね。
【K】でも、それって考えようによっては少々頑固に見えるし、時代とともに変わるファッション性とは異なるところにあるように思えるわ。もちろんそれが長所でもあるのだけれども、イタリア靴のような流行を捉える柔軟性を英国靴は持たないことが多いわよね。
【M】ところが、老舗英国ブランドでありながら、ジョンロブはファッションコンシャスなのよね! 実は創業してから現在に至るまで「これこそがジョンロブ定番」といったモデルの革靴はないの。使用する木型も革の素材も一つの型に収まらず常に変化をし続け、ジョンロブらしい堅牢さと上品さを残しながら常にモデルチェンジを図っている。クラシックにこだわるのではなく、時代やトレンドに合わせた新しい木型の開発を続ける「最高峰だから」とおごりがないところがさすがよね!
「美しいプロポーションで世の男性たちを魅了する一足」
【A】そういえば、先日、夫の靴を見るために、老舗百貨店の靴売り場に行ったの。美しくて、普遍的なシェイプの一足に惚れ惚れしてしまったわ。
【M】履かれてなんぼだけじゃなく、靴は置いてある姿にも美しさを感じるの、わかるわ。
【A】中でも特に目を引いたのが「GAZIANO&GIRLING」の一足なの。
【M】アキ、審美眼があるわね。あの靴は特別よ。正面から見て深く絞り込まれたウエストラインは芸術作品のようなの。斜めから見ると、キュッと絞り込まれた土踏まずや小ぶりのヒールの効果でエレガントに見える……どの角度から見ても美しい一足なのよね。
【A】その通り! 驚きなのは、そのシェイプが履き心地の良さに繋がっていることなの。女性の靴でヒールが高いと足をキレイに見せてくれるということがあるけど、長時間履くと足が痛くなってしまうのが現実よね。でも、土踏まずの形に合わせて、食い込むように作られていることで、しっかりとしたホールド感と吸い付くような履き心地を味わうことができるそうよ。男性の靴も一緒なのね。
【K】美しい姿を保ちながら、それを履く男性を輝かせてくれる一足。まさに名脇役ね!
「外出が多いなら履き心地が重要!」
【A】でも、やっぱりビジネスシューズは“履き心地”が重要なポイントと言えそうね。
【M】そうね、いくらデザインが良くても、足に合わない靴を履いていると、足の痛みをカバーした歩き方でかっこ悪いわよね。
【K】女性の靴でも起こることだけど、フォルムが美しいヒールの高い靴を購入しても、履く機会が滅多にないなんてことあるじゃない。デザインがステキだけど、長時間歩くことに向いていない靴を履いて歩いている女性は、腰が引けていたり、ガニ股になっていたりして不格好。男性の場合も歩き方がおかしいと、高級な装いが全て台無しよね。
【A】夫は沢山のビジネスシューズを試してみて抜群のフィット感に「本当に既製品なの?」と何度も言っていたの。量産品のシューズの場合は、できるだけ多くの人に合うように設計されているじゃない。でも、足の形は千差万別で、表面的な足の大きさだけではなく、甲の厚さや横幅、土踏まずの形など、足のサイズを決める要素は色々あるわよね。木型のバリエーションが豊富なブランドは形状の異なったサイズのものが多く作られるから、自分の足により合うものが見つけられるのよね。
【M】私の持論はビジネスシューズこそ高級ブランド、いわゆる最高峰の職人技術で丁寧に作られた一足を履くべきだということ。まずは、革も職人たちが厳選したものを使用しているじゃない。そして、各パーツごとにきちんとした素材が使われ、縫い合わせもしっかりしているから丈夫。きちんとした手入れをすれば、履くほどに革の色や質感に味わいが出るし、足にも馴染んでくるわよね。
【K】イタリアの高級シューメーカー「Stefano Bemer(ステファノ ベーメル)」ではハンドソーンウェルテッド製法という大変な手間と時間がかかる製法で一足作り上げているの。高級ブランドはリソースを出し惜しみしないことで、店頭に高品質のシューズを並べ続けているのよね。
【M】「靴は生きた素材であることを忘れてはならない。死に絶えることなく、いつまでたっても生き物のように、履く人と一体化するものである」。「フェラガモ」の創設者、サルヴァトーレ・フェラガモの次男レオナルド・フェラガモの言葉よ。「人生と共に歩むパートナー」となりうるステキな一足を是非男性には見つけてほしいわよね。
【今回ご協力いただいた方】
豊富な商品知識を基に抜群のセンスでチョイスしたアイテムを、巧みな話術で解説。こんな店員さんに接客してもらったら、予算オーバー間違いなし!
【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。
re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。
マリ(中央)
re*colabo代表。ファション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。
クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。
アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。
photo:Mutsuko Kudo
text:re*colabo