第十五回「なぜダサくなる? 大人のスポーツミックス問題」
「部屋着にしか見えないスウェットパンツは近所だけにして」
【K】この辺りって良いジムがあるのかしら? ジム帰りの人と結構すれ違うよね。
【A】バッグが小さめだから、ランニング帰りかもよ?
【M】この界隈に良いジムがあるって聞いたことはないし、こんな街中でわざわざランニングするかな?(笑)私は、トレンドのスポーツミックススタイルの失敗例だと思うな。全身をスポーティーなアイテムで揃えると、ジム帰りに見えちゃうのよね。
【K】ええ!? だって今の人なんかまさにトレーニングウエアだったわよ? スポーツミックスは、普段着にスポーティーなアイテムを取り入れるファッションでしょ?
【M】「スポーツミックス」を「スポーツをする格好」と同じと思っている人も多いのよ。若者だったらそれもありだけど、大人が真似をすると痛い目に合うわ。
【A】痛い目に合う? どんな風に?
【M】例えば、カジュアルな服装が許されている企業を訪問したとする。社長がスポーツミックスコーデで現れたらどう?
【K】お洒落だな、若々しいな、スタイリッシュだな、元気な企業だなって思うかな。
【A】うんうん。
【M】全身スポーツウエアで、ジャージ×ジャージで現れたら?
【K】アスリートみたいに? 私は瞬時に引くかも。感覚的に受け付けない。
【A】オフィスでそれを身にまとうセンスを疑うわ。若い子でも流石にちょっと言っちゃうかもな。
【M】でしょ? ちょっと極端な例だったかもしれないけれど、大人は若者と違って、求められるものが多いのよね。周りは大人に対して無意識に清潔感や品、知性を求めるものよ。最低限のTPOを押さえていないと、印象を悪くしかねない。知らないうちに評価を下げられるのよ。
【K】なるほどね。そう考えると全身スポーツウェアは、アウトドアならOKでも、街中はNGね。
【A】スウェットパンツをコーディネートに取り入れて街中で穿いている大人もいるよね。部屋着のまま出てきちゃったかのような。
【M】ダボダボ、ヨレヨレのね。しかもトップスもヨレヨレだと、どんなイケメン俳優でも部屋着にしか見えないし。でも難しく考える必要もないのよ。例えば、細身のテーパードシルエットでしっかりした素材のスウェットパンツを選べば、スタイルもよく見えるし、部屋着に見えることもない。十分街中でも穿けるわ。
【A】銀座でも穿ける?
【M】もちろん! いまやスポーティーなカジュアルはワンマイルウェアじゃないわ。エグゼクティブな大人の男性ならさらに「ラグジュアリースポーツ」を目指してほしいな。
「銀座でもおしゃれな大人とみなされるスポーツミックスとは」
【K】ラグジュアリースポーツと聞いて思い出した。先日、ドラマティックな出来事があったの。コインパーキングに車を停めようとしたら、すでに前に1台の車が入ろうとしていて。場内を覗いたら2台分空いてはいたのだけど、1台分は「ここに駐車スペース作る?」ってくらいにめちゃくちゃ入れにくい場所でね。私のテクニックじゃ時間が掛かりそうだなぁって思っていたら……
【A】「トライしてみたら、意外と私、運転上手かったの」って話?
【K】違うって!(笑)不正解よ、アキ! なんと前の車が、難しい方にワザワザ停めたのよ! しかも、外車の大きなSUVをよ?
【A】え~! 素敵すぎる~! なんて紳士なの♥
【M】で、その紳士が車から降りて来るのを待って、ファッションチェックしたのね(笑)
【K】マリ姉、正解です! するでしょ普通。
【A】普通ではないかもだけど(笑)。どんな人だったのか気になる!
【K】質の良さげなジャケットにTシャツ、センタープレスが入ったスポーティーなパンツ、そしてスニーカー。そう、あれこそ、ラグジュアリースポーツよ!!
【M】その紳士のふるまいが、さらにラグジュアリー感を加速させたわね(笑)。スタイル的にはセンタープレスの入ったパンツがきっと勝因ね。ほら、デニムが苦手な人でもセンタープレスが入ったものだと綺麗めスタイルを作れるって話を前にしたじゃない? それと一緒で、スポーティーなパンツでもセンタープレスが入っているとドレスパンツと同じような感覚でコーディネートができるのよ。大人のキレイめなスポーツミックススタイルを簡単に作れるわ。
【K】なるほどね。アイテムをきちんと選べばスポーツミックスも簡単なのね。確かに紳士のパンツがヨレヨレでダボダボのスウェットパンツなら、着替えの途中で出てきた人みたいだったかも(笑)。あのパンツ、どこのブランドだったんだろう。
【M】ジャブスかな? イタリアのパンツブランドなのだけど、今ものすごく注目されているの。これを穿くだけで大人のスポーツミックススタイルになるから本当におすすめ。これからの季節ならダウンベストやニットベストを合わせても素敵だしね。トップスがTシャツだとしてもラフになり過ぎることもないの。色は黒やグレーが合わせやすいと思う。そしてもう一つ大切な要素は素材選びね。これからの季節ならウールと合成繊維の混紡でストレッチが効いているものがいいんだけど、長時間履いても膝が出ないもの。夕方に会ったら膝が抜け出てしまっていたらガッカリだからね。ここはかなり大切。せっかくコーディネートがうまくできても、大暴落につながっちゃう!
【A】それは気をつけないといけないわね。ではまとめると、大人のスポーツミックスに必要なのはメリハリね。全身ラフ過ぎても、全身スポーティでも素敵には見えない。特にパンツは吟味して選ぶこと。ダボダボでヨレヨレなスウェットパンツは何を合わせてもダメということで。
【K】そうね、本当にスポーツをする時は別にして、街を歩く時は大人ならばスポーティーなスタイルも、ファッション性に重きを置くことを忘れちゃだめってことね。
【M】実は昔ながらの3本線ジャージ、持っていて……。どうしたらいい?
【K】えええ? そ、それは……。息子くんにあげてください!!!!(笑)
【今回ご協力いただいた方】
プレスルームに通された私たちの前に、颯爽と現れた佐藤さん。一瞬モデルさんと勘違いしたほど、スタイルもスタイリングも抜群。その見た目とは裏腹に、親しみやすい笑顔と口調で分かりやすく紹介してくださった最新クローズに、スタッフは感嘆とため息を繰り返したのでした。
【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。
re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。
マリ(中央)
re*colabo代表。ファション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。
クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。
アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。
photograph:Ayako Nakamura
text:re*colabo