紳士のスーツスタイルには欠かせないベルトだが、その起源をご存知だろうか。それは古代ギリシャ時代に遡る。腰に巻いた帯に剣を挿して使う「バルテウス(BALTEUS)」という武具があったとされ、これがのちにベルトに変化したという。紀元前から武器携帯用の道具として発展してきたが、20世紀に入って革ベルトが紳士用のアイテムとして普及していき、今では装身具の一種として権威や地位を表するために用いられることもある。なにげなく装着しているベルトが、ステータスを顕示しうるのだ。

ベルトで有名なメーカーには馬具製造に出自を持つ例が多いが、「J&M デヴィッドソン」は1984年にイギリス人のジョン・デヴィッドソンとフランス人のモニク・デヴィッドソンの夫婦が始めたブランドで、ヨーロッパの伝統的なスタイルに独特の装飾を取り入れたデザインで高い評価を受けている。なかでもレザーグッズは出色。こちらのメッシュベルトは、創業時から人気を博している逸品で、精緻な編み込みはすべて手編み。英国的な質実剛健のクラフツマンシップに、フランスらしいモードのエッセンスが加わり、クラシカルでありながら現代の空気感を絶妙に捉えたデザインで、スーツからカジュアルまで幅広く汎用できそうだ。

「ベルトは締めるものではなく、巻くもの」であるべきだ。サイズ調整のための道具としてではなく、ネクタイのようにベルトを巻くという気持ちであしらえば、仕草や行動も優雅になるだろう。紳士のスタイルはベルトが左右するといっても大袈裟ではない。

熟練した職人の手で、美しく盛り上がるように編まれ、細すぎず太すぎない端正なルックスに仕上がっている。しなやかな革の風合いも素晴らしい
夫婦であるジョンとモニクの頭文字であるJとMを取ったブランド名が刻まれている。ベルト先のプンターレ(メッキ加工)がアクセントに

J&M デヴィッドソン 青山店
TEL:03‐6427‐1810

text:Masato Nachi
photograph:Kazuya Aoki
styling:Yoshiki Araki