第二十回「傘ですべてが台無し問題」
「便利だし仕方がないのはわかっているけど……」
【A】 あ~疲れた。仕事中いつもは電車移動だけど、やっぱり車は便利よね。
【K】本当……。重い資料やサンプル商品を運ぶのに電車では無理だわ。若い人ならいいけど、体がもたない!
【M】そうよね。特に今日みたいな雨の日はすぐタクシー乗っちゃうわ。いい靴履いている時は特にね。じゃないとすぐボロボロになっちゃうから。
【A】わかる! それ結構大事。女性もそうだけど、男性の靴もやっぱり防水タイプが便利よね。大切に使うなら防水スプレーマストよね……。
【K】ところで、こうやって車から見ていると、雨の日の傘ってすごく目立つのがよくわかるわね。すごくビニール傘率高くない? みんな透明のアレ……。
【A】確かに。ここだけでも1、2、3……。結構いるわね。それもよさそうなスーツを着ている人ばかり! なんだか残念感が漂っているな。
【M】わかる。私も急に雨降ってくるとどうしてもコンビニでビニール傘買ってしまうことがあるけど、あれってサステナビリティ的にもよくないし、第一オシャレじゃないのよね。どんなに素敵な装いをしてもすべて帳消しにされて一瞬で終わってしまう感じ。
【K】わかるけど、マリ姉厳しい~! でもビニール傘って本当に困る。いつの間にか自宅の傘置き場は山盛りになっちゃうし。本当買いたくない。めちゃくちゃ邪魔。
【A】うちも同じ。夫がついついって買ってきちゃうのよ。まだ使えるって取っておくともう山。スタイルも台無しになるから、本当にもう買わないで欲しい。それにしても男性が素敵に差せる傘ってどんなのがあるんだろう?
【M】それがね、あるのよ。本当に素敵なのが!
「アンブレラ界に革命を起こした英国王室ご愛用の逸品」
【M】傘ってそもそも女性ものだけで男性ものはなかったって知ってる?
【A】え? そうなの? 知らない!
【M】かつてイギリスでは女性のものとされていて、男性はコートの襟を立てて雨に濡れて歩いていたらしいの。昔の貴族たちはそれこそ馬車で建物の前に横付けしていたから、クラスが高い人たちは傘を使う必要がなかったみたいなんだけどね。当時、英国紳士の正装は三つ揃えのスーツにシルクハット、ステッキだったの。そのステッキが傘に取って代わられたから、英国紳士にとって傘はアクセサリー的なニュアンスもふくまれているらしいのよ。
【K】そうなんだ、豆知識! 面白い。英国紳士ってそういえば傘を持っている印象ある。
【M】その傘を今の形にしたのが「FOX UMBRELLAS」というブランドなの。持ち手の部分がシルバーでできているものもあるのよ。
【A】え? 持ち手がシルバー? それってすごいラグジュアリー! もはやインテリアにもなりそうね。
【K】そういえば、持ち手の部分が動物になってるタイプを見かけることがあるけど、そういうことだったのね。すごく腑に落ちて納得。男性にとって傘は数少ないアクセサリーの一つなのね。
【M】そうそう。シルバーの持ち手は重さもあるみたいだけど、その重厚感がいいわよね。使っていくと少し黒ずんだりして、それこそ一生もの!
「濡れない大きさの折りたたみ傘でスーツ保護に」
【K】そういうラグジュアリーな傘もいいけど、やっぱり最近ゲリラ雷雨もあるから折りたたみ傘必須じゃない? よっぽど天気予報で雨の確率が低くない限りは持って歩いてる。
【A】わかる~。私も持って歩いてる。最近の傘は小さくて軽量なのはいいんだけど、ちょっと風が吹くとすぐにお猪口みたいになっちゃって。頼りないのよね。とっさに買って開いたらその小ささにびっくりしちゃうほど。洋服ずぶ濡れで差している意味ないことあるもの。
【M】それ、折り畳み傘あるあるね。あ、見て、あの人かなりずぶ濡れ。今の会話のサンプルみたいな人だわ。雨に濡れると生地が傷む原因になるから、スーツを大切にするなら傘のサイズは大切よね。
【K】同感! それにこの間、トートバッグの開口部からバンブーの持ち手が出ている人がいたの。きっと傘だったと思うんだけどお洒落だったな。それこそアクセサリーみたいで全然違和感なくて。持ち歩くのには最適かも。
【A】それはいいかもしれない。バンブーがトートバッグから出ていたら絶対チェックしちゃうと思うし。あ、雨の日のスーツのチェックポイントが増えて嬉しい~。
【M】あはは。男性もちゃんといい傘持って欲しいわよね。それにしても、私たちうるさすぎじゃない? タクシーの中で……。
【K】そうよね、運転手さんドン引き。ごめんなさい~~。笑
【今回ご協力いただいた方】
英国のモノを大切にし、次世代に引き継ぐ文化など、日本と似た価値観に親近感を感じているという井上さん。個性的なのに、品の良さがあふれ出ている装いはまさに英国紳士そのもの。親しみやすい笑顔と優しい口調で語られる幅広い知識にスタッフ一同すっかり癒されてしまいました。
【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。
re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。
マリ(中央)
re*colabo代表。ファッション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。
クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファッション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。
アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。
photo:Ayako Nakamura
text:re*colabo