第二十一回「シンプルな作りゆえの奥深さに気付かない問題」

「見た目で分かるのはデザインだけじゃない。素材の良し悪しだって一目瞭然!」

【A】とってもステキなカフェね~。眺めもいいし、席も広くてゆったりしていて心地いい!

【K】そうなのよ。ランチタイム以外は意外とビジネスマンが多いの。ちょっとした打ち合せに使っているみたいなのよね。さっき、アキがコートを拾ってあげていたじゃない? 彼らもきっと打合せよ。

【A】拾ったわ……おも~いステンカラーコート。それに生地も硬くてごわついた感じ……。

【K】アキったら、その言い方!(笑)でも触らなくてもわかったわ、一目瞭然よ。

【A】持ち主はステキな印象だったんだけどな~。着心地の良さと質の良さってイコールだと思うのよね。

【K】わかるわ。その2つにこだわっている製品だったらシルエットやデザインにもこだわらないはずない。上質なものって全てがイコールでつながるのよね。

【M】ステンカラーコートってフォーマルな印象が強いじゃない。それって、素材の雰囲気が影響していると思うのよね。中でもハリ感のある素材は、きれいめで上品な印象。上質なスーツに身を包むような男性たちには、コートも自分が心地良くいられる素材を選んでほしいわね。

「女性だけじゃない、男性だってシルエットは重要!」

「1923年に設立された『GRENFELL(グレンフェル)』。ブランド名は、イギリスの著名な冒険家であり医師でもあるグレンフェル卿の名に由来しています。デザインはステンカラーコートのスタイルにウエストをシェイプすることで、シルエットにメリハリが生まれるベルテッドタイプ。ミニマルなデザインゆえに単調で間延び見えしてしまうこともあるステンカラーコートのシルエットを、ベルトをつけることでエレガントな雰囲気に仕上げています」(ヴァルカナイズ・ロンドン マーケティングマネジャー井上雅士さん)

【K】ステンカラーコートってメンズのファッション誌でも「最初に買うべきコート」として紹介されていること多いじゃない? 通勤通学用には便利なアイテムよね。

【A】確かに、朝の通勤時間にステンカラーを着用している男性多いわよね。ただよーく観察していると、様々な工夫やディテール、ブランドごとの微妙な違いに気づくの。

【M】確かにそう! Aラインのシルエットが基本かと思われがちだけど、箱のように四角いボクシーラインのものもあったり。丈の長さや、ボタンの付け方、スリーブもさまざま。シンプルなイメージだけど、実はバリエーションが豊富。

【K】それに、大きめサイズを選んで野暮ったい印象になってしまっている人もいるよね。生地が余ると、たくさんシワができるから着られた感が出ちゃうじゃない? だから、サイズ感は大切。ジャケットの上から羽織った時に、すっきりと見えるサイズ感がベスト!

【M】シルエットをキレイに見せるには、素材も重要ね。先ほどの男性が持っていた、ごわごわした厚手の硬い素材だとシルエットがキレイに出るはずがない。できれば、ライナー付きの薄手の素材がおススメなんだけどな~。

「エベレスト登頂、太平洋大西洋横断。歴史的現場に立ち会い、イギリス女王も愛したブランドの一着」

「裏地には保温性の高い、デタッチャブル仕様のウールアンゴラのライナーが付いています。取り外しも可能なので、スリーシーズン活躍してくれます。ブリティッシュを感じるライナーのチェック柄が英国らしいですよね。スッキリとしたシルエットと膝丈で、秋から重宝するアイテムに仕上がっています」※一部のアイテムでライニングの柄が異なります。(ヴァルカナイズ・ロンドン マーケティングマネジャー井上雅士さん)
「こちらのアイテムに使用されている『グレンフェル・クロス』はブランド名の由来になったグレンフェル卿が極寒地への探検の際に求めた『防水・防風機能を備えながらも湿気は外に逃がし、かつ軽量な素材を』というリクエストに応え生み出された生地で、同社にて商標登録されています。高密度で細い糸を緻密にきつく織ってある100%コットンで、ハードな使用に耐えられ、防水性能と高度な撥水性能、防塵、透湿性・通気性などにも大変優れています。生地に撥水加工をしているわけではなくて、織り方により生地自体が撥水するので性能は半永久的に持続すると言っても過言ではないですね。直接肌に触れる生地面はコーティングや合成繊維とは比較にならない爽やかな着心地です。とても軽くて、細かい織りなので風を通しにくくて温かい! まさにグレンフェル卿の望みを全て叶えた生地を使用した一着なんです」(ヴァルカナイズ・ロンドン マーケティングマネジャー井上雅士さん)

【K】マリ姉のおすすめのブランドは?

【M】知る人ぞ知る名ブランドがGRENFELL(グレンフェル)。英国の伝統を継承するブランドでね、高密度で細い糸を編みこんで作られた『グレンフェル・クロス』が有名なの。軽くて通気性がありながら、風を通しにくく温かいのよ。もちろん機能性だけじゃないわ。緻密な織りからくるその外見は、うっとりするほど美しくて~♥ 高い技術を持つ職人たちが、デザイナーが要求するどんなラインをも作り出してしまうの!

【K】マリ姉、ちょっと怖い(笑)

【A】グレンフェル~♥ 私も知っている~♥『グレンフェル・クロス』ってね、防水・防風・対磨耗に優れているから、エベレスト登頂から、第二次世界大戦、太平洋大西洋横断まで、さまざまな歴史的シーンで使われたのよ! 英国王室御用達(ロイヤルワラント)の栄誉に授かったこともあるのよね。それなのに、それを鼻にかけない風の、本物然と、凛としたブランドイメージがたまらないっ!

【K】アキも、ちょっと怖い(笑)

【M】実は昨日、グレンフェルのステンカラーを着ている方に遭遇したの。遠目からもその美しいシルエットに目を奪われたわ。ちょい長めのクラッシックなスーツに対して丁度いい丈感。もも丈くらいの長さのものを合わせてしまうと、やっぱり少し子供っぽい印象になってしまうわ。丈感って本当に重要なのよね。

【A】そうね、短いとカジュアル感が増すかもしれないわね。

【M】アーム部分もほっそりとした作りで、薄手の生地だからシルエットがキレイにでていて、スーツの上に着ても、すっきりとしていたわ。逆にコートを脱いだら、意外とぽっちゃりとしていたことにびっくりしたくらい(笑)

【K】細見え?? それは最高!

【A】他アイテムの主張を妨げないシンプルデザインはステンカラーコートの魅力だし、素材が薄手ならばジャケットやブルゾン、ダウンベストなどのアイテムとのレイヤードスタイルも楽しめるのも魅力よね。

【K】実はステンカラーコートって日本独自の呼び名なんだって。正式名称はバルマカーンコート。バルマカーンはスコットランドの地名でね、「オシャレ紳士の国」が発祥と知って妙に納得したわ。貴公子が着てそうじゃない(笑)。カジュアルスタイルに合わせても、ほどよく品のある着こなしができるのはそのせいかと。

【A】私、ステンカラーコートとカジュアルの組み合わせ大好き♥ ライトブルーのシャツ×ネイビーパンツとか♥

【K】え、それめっちゃかっこいい!

【A】クミ、興奮しすぎ(笑)。関西弁になってるよ。

【M】そうね、シャツ×パンツ×スニーカーのラフな着こなしに、ステンカラーコートを合わせた「ラフになりすぎない大人のカジュアルスタイル」、私も好きだわ。1枚でオンにもオフにも活躍できるのだから、試着をしっかりして吟味を重ねて選んでほしいな。一生ものになると思うのよ。言いすぎかしら?(笑)

【今回ご協力いただいた方】

ヴァルカナイズ・ロンドン マーケティングマネジャー井上雅士さん
英国のモノを大切にし、次世代に引き継ぐ文化など、日本と似た価値観に親近感を感じているという井上さん。個性的なのに、品の良さがあふれ出ている装いはまさに英国紳士そのもの。親しみやすい笑顔と優しい口調で語られる幅広い知識にスタッフ一同すっかり癒されてしまいました。

【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】

<委員会設立の趣旨>
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。

re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。

マリ(中央)
re*colabo代表。ファッション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。

クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファッション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。

アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。

photo:Ayako Nakamura
text:re*colabo