第二十八回「見える部分へのこだわりと、見えない部分へのこだわりのなさ。そのギャップに冷めてしまう問題」
「見えない部分だから大丈夫! に潜む、あなたの格を下げるふか~い落とし穴」
【A】11月も終わりだというのに、今日はセーター一枚で十分な温かさ。ちょっと歩いたら汗ばんでしまうくらいよね。
【K】街を歩くビジネスマンで、ジャケットを手に持って歩いている人も見かけたくらいよ。
【A】おっと! 噂をすれば片手にジャケットのビジネスマンが……。
【M】あら~これは問題ね。そ~っと彼の腰回りに注目してみて。決して騒いだりしてはだめよ。
【A】ひっ! くたくたに疲れきっている革が手入れを怠っている証。
【K】そして、どこでも自由に留められるようにピンのないタイプのベルト……お腹が出てきても対応可能だからいいや! 的な雰囲気がびんびん伝わってくる。
【M】見えないから、大丈夫! とベルト選びには手を抜きがちなんだけれども、腰掛けるときはジャケットのボタンを外すからね。
【A】確かに、打合せなんかで、向かい合って座った人のベルトが目に入ることって結構ある。本人にしたら、たかがベルトって思っているんだろうけど、「こんなステキなスーツを着ているのにこのベルト!?」ってイメージが急降下してしまうことあるわよね。
【M】見えない部分にこそ、良いのものをもってくる。これって本当のオシャレさんって思わない?
「人目につきにくい場所だから、敢えて希少価値の高い革をチョイスという“粋”」
【M】ビジネス向けだったら、やはり素材は革よね。合皮よりも本革のほうが質感と見栄えがいいし、きちんと手入れをすれば、長く革の良さを楽しむことができるわよね。
【K】ね~「コードバン」って知っている?
【A】初めて聞いたわ!
【M】アキったら知らないのね! あらゆるシーンで映え、美しい表情を見せてくれる最高級の革。明るい空間では気品を、暗い空間では艶やかさを感じさせてくれるのよ。オイルを含んだスムースな表面が微光沢を放って、人目を惹くのがコードバンよ。意外と知らない人っているけど、他の革との違いは明らかなのよ。
【K】見た目だけじゃないのよ、触り心地もいいの。
【A】革で触り心地がいいって、なんだかあまり聞いたことのない褒め言葉ね。
【M】クミの言う通り。なめらかな表面はさらりとした触り心地。ベルトループを通す時、ふと腰に手をまわした時……自然とベルトに触れることってあるわよね。その瞬間に、手触りがいいのはもちろん、明らかに高い質感からは着用する満足感も得られるのよ。
【K】繊維がぎゅっと詰まったコラーゲンが集合している馬のお尻の革を使っていて、ハリ・コシ共にトッププラスの素材。とっても丈夫で伸びにくいのよ。
【M】コードバンを使ったベルトは、さまざまなドレスコードで使えるから、バックルもシンプルでクラシカルなものがありがたいわね。
【A】デザイン、質、共にビジネスにはもってこいのアイテムなのね。
【M】見た目が美しい革だから、靴や鞄に使われることって多いのよね。でも、それをあえて見えないベルト部分に持ってくる。それってすっごく粋よね!
「着こなしの仕上がりは名脇役次第」
【K】でも、コードバンのベルトはカジュアルな服装には、少しエレガントすぎるかもしれないわね。
【M】確かによね。カジュアルには少しだけ遊びを入れた一本をつけてほしいものね。
【A】やっぱり、カジュアル感強めのメッシュベルトがいいんじゃな~い。腰元にアクセントもつけられるし。
【K】デザインで遊ぶのもありだけど、メッシュベルトを使ったコーデは剣先のあしらい方で遊ぶなんていうのもいいかも。そのまま垂らしてもイマドキ感がプラスされ洒落たスタイリングに仕上がる。
【A】剣先を結んでみるなんていうのもアリよね。
【M】あえてバックルに通さない“シンプル結び”や、2重に巻いてより存在感を強調できる“W巻き”など巻き方にも種類があるから、着こなしに合ったテクニックでメッシュベルトコーデを愉しんでみるなんていうのも楽しいかも。
【K】プンターレが控えめに配されたメッシュベルトの剣先を、腰元から垂らしてコーディネートのアクセントにするなんていうのもステキ。
【M】それに、メッシュベルトは、毎回少しずらす事で、同じ所が痛まずに使えるから長く使えそう。
【A】主役ではないけれども、それ次第で着こなしの仕上がりが大きく変わる名脇役……それがベルトなのね。
【今回ご協力いただいた方】
彼のご登場に、思わず後ずさりしそうになったほどのオーラの持ち主。「何でも知っている玄人感」を漂わせつつのジェントルマンな応対が印象的でした。さらに驚いたのが、大学の卒業を待たずにイタリアのサッカーリーグに所属されたという異色の経歴。「爽やかさをウリにしていた時代もありました」とハニカミながら微笑む新井さんにスタッフは胸を射抜かれたのでした。
【男の身だしなみ向上委員会 by re*colabo】
今の時代、仕事をする上でどれだけ女性の心を掴むかというのは大きなアドバンテージ。そこで、男性の身だしなみを女性たちは実際にどうみているのかを、女性ファッションライターの目線から本音で語ります。身に付けるものは、本人のイメージを左右する重要なファクターであり、気付いていなかったことを改善することにより、改めて身だしなみを整える一歩になれば嬉しく思います。
re*colabo
女性誌出身のクリエイティブ&ライターチーム。これまでに光文社「STORY」、講談社「フォルツァスタイル」など数々の媒体や、書籍で執筆。また、航空会社のオリジナル商品を手掛けるなど、女性ならではの視点で多くのヒット商品を生み出している。その他、女性の心を鋭く分析するマーケティング調査が人気であり、大手化粧品会社ほか、さまざまな企業から依頼を受けている。
マリ(中央)
re*colabo代表。ファッション系出身ライター。「大人だからできる」シックなコンサバを推奨。内面を映すスタイリングに定評あり。
クミ(右)
元バンカーの生真面目ライター。ファッション、グルメ、トラベルなど多岐に渡り執筆。シンプルで「カッコいい」装いが得意。re*colaboで一番マナーやルールに拘りあり。
アキ(左)
人物取材が得意。10代半ばから20代後半まで、フランスとアメリカへ留学。結婚を機に夫の転勤に伴いアメリカにて駐在妻を経験。帰国後ライターに。
photo:kuma*
text:re*colabo