水温は4度! 本場サウナは湖での冷水浴もセットで愉しむ

ラップランド地方では、公共のサウナを至るところで見かける。

旅の話に戻ろう。翌日は、コテージの敷地内にあるサウナ施設に向かった。サウナはフィンランドが発祥であり、長いあいだ同国文化の中心的存在となってきた。「森と湖の国」と呼ばれるフィンランドには19万弱の湖沼と数百万カ所のサウナがあり、この2つの関係は切っても切り離せない。フィンランド流サウナの体験には、熱した身体を冷たい湖でクールダウンさせるのが不可欠だ。11月も終わりになると湖の表面は凍ってしまうが、冬場でも氷に穴を開けて飛び込む。氷水に浸かるなんて考えただけでゾッとする、と思う人もいるだろう。しかし、これが健康にいい。古くから研究を続けてきたオウル大学では「血流の循環が改善して代謝が上がり、血圧も下がる」などの成果を発表した。

サウナの中でも最もポピュラーなのが、白樺の薪を燃料にして石を焼き、そこに水をかけて煙(水蒸気)を発生させ身体を熱気で包み込む「スモークサウナ」だ。汗が噴き出した身体の血行をさらによくするため、同じ空間に居合わせた人同士で白樺の小枝でバサバサ叩き合う。サウナは地域の人々の憩いの場であり、社交場でもある。スイムウェアに着替え、あらかじめ薪をたいて温度を高めておいてくれたサウナの中へ入ると、香ばしく燻された煙が鼻をついた。向かい側にいた地元の若者が焼け石に水をかけると、熱気がものすごい勢いで部屋中に充満した。

熱い。我慢できない。立ち上がって出ようとすると、別の一人から「もう無理という状態になってから、もう20秒か30秒辛抱するといいよ」とアドバイスされ、座り直した。そうして限界まで身体を熱したあとで、夜の闇の向こうにたたずむ湖へ歩き、天然の冷水風呂へ飛び込んだ。水温計の数値は「4度」。冷たいというより、痛い! 3秒もじっとしていられず、走って再びサウナ室へ。同じことを繰り返すと、2回目は冷水が少しは我慢できるようになり、3回目はまったく平気になった。寒気を寄せつけない膜が身体にできるのだそうだ。新陳代謝が活発化するのを実感できる。