アメリカで試乗、見直したいセダンの美点

ES300hのキャラクターラインは減らして面の構成で表情を出すデザイン手法が採用されている

米国では「ウルトララグジュリー」というグレードに試乗。これがほぼ「Lパッケージ」に相当するらしい。

このモデルのよさをいろいろ書きたいのだが、なにより感心したのはサスペンションシステムだ。新開発のダンパーにより、カーブではしっかりと気持ちのいいハンドリングを、高速では快適な乗り心地を、それぞれ体験させてくれる。

クルマに詳しいかたはESが先発のトヨタ・カムリとシャシーをほぼ共用しているのをご存知だろうが、脚回りが違うのだ。上質感では図抜けている。

「ウルトララグジュアリー」は低騒音タイヤを履く

スタイルもある。LSもスタイリッシュとはいえ、後席重視のパッケージであるが、ESはよりパーソナルな方向に思い切って振っている。

そのコンセプトは、ルーフラインがすっとなだらかにトランク後端に向けて降りてゆくサイドビューで明らかだ。

デザイナーの言葉を借りると「クーペライク」(クーペ的スタイル)。クーペとは短く切るという語源どおり、車体をあえて縮めてドライブを楽しむように仕立てた馬車由来の単語だ。

新型ESでも意図的に後席を少し小さめに見せることで運転手が主人公という車両のコンセプトを際立たせているのである。

後席は実際にはかなり広いのだけれど、外観はデザイナーの意図通りの仕上がりになっている。さきに触れたように、上質なスーツにつながる、伝統とデザイン性のバランスのよさが印象的だ。

これこそ、いまビジネスマンに注目してもらいたいスタイルといってもいい、と私は思っている。室内は静かだし、荷室はゴルフバッグがたくさん入るし、日常的な使い勝手もよさそうだ。

セダンの美点は、サスペンションストロークがたっぷりとれるから乗り心地がよく、箱型なので遮音性が高く、落ち着いたフォーマル感を持つなど、数多くある。

もしこれまでスポーツカーやハッチバックやSUVばかり体験してきたなら、ご自身のクルマ遍歴に新型ESのような出来のよいセダンをぜひ加えてもらいたいと私は思う。

自分をうまく引き立てるモノ選びをすること。それこそ本当の意味でスタイリッシュだろう。その目的を叶えてくれるセダンである。

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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