こんにちは、吉村喜彦です。酒にまつわる逸話やおいしい飲み方を紹介する連載「in vino veritas(イン・ウィーノー・ウェーリタース)」。直訳すれば「酒に真実あり」となります。これまで多くの取材や旅を通じて感じた酒の魅力を、みなさんと分かち合いたいと思っています。第1回目は、ウイスキーの話から。
ジョニーウォーカー レッドラベル
スコッチ・ウイスキーといえば、なんといってもジョニーウォーカーだ。
子どもの頃、家の応接室の飾り棚には中元や歳暮でいただくウイスキーが大切にしまってあり、子どもの目にも、なんだか神々しい光を放っていた。
父はいつもは角瓶を飲んでいたが、ジョニーウォーカーの赤ラベル(ジョニ赤)や黒ラベル(ジョニ黒)をもらうと、小躍りして飾り棚にしまい、お客さんが来ると、うやうやしくそのボトルを取りだしたものだ。
ジョニーウォーカーのスマートなボトル――このシェイプこそがスコッチなのだと、少年の日に深くこころに刻まれたのである。
一流バーテンダーに「ハイボールに合うウイスキーは?」と訊くと、「ジョニ赤」とこたえる人が多い。
味わいは適度に軽やか。スコッチらしいスモーキーな香りがたち、エッジのきいたスパイシーさもある。全体的にバランスがとれていて、なによりも価格が手ごろである。炭酸水で割るにはぴったりなのだ。
「ほどの良さ」が、「おとなの酒」を象徴している。
ジョニ赤に代表されるブレンディッド・ウイスキーにはさまざまなモルト・ウイスキーが入っているが、核になるものは「キー・モルト」といわれる。
ジョニ赤のキー・モルトは、カードゥというモルト。華やかで上品。甘い飲みくちが特徴だ。
ジョニ赤のハイボールを作ってもらうとき、バーテンダーにお願いして、このカードゥを少しフロートしてもらう。と、ジョニ赤がよりいっそう爽やかに香りたち、絹のようにやわらかくなる。これ、お約束します。
ジョニ赤の1960年代オールド・ボトルを使ったハイボールなら、なおさらおいしいです。
ぜひ、お試しあれ。
text : Nobuhoko Yoshimura
photograph : Katsuyoshi Motono
location : TENZO