ビジネスクラスと同じ過ごし方ができる

スウェーデンのボルボ・カーズがユニークな自動運転車のコンセプトを発表した。「360c」と名付けられた近未来的なミニバン型の車両で、特徴はステアリングホイールがない点にある。

ボルボはこれを将来のビジネスマンのために開発中という。2018年9月5日にスウェーデンでお披露目されたこのコンセプトモデルは、飛行機での移動より効率的に時間を使えることに眼目をおいている。

テールフィンは実際に量産化されたときに装着されるか不明とのこと

「飛行機の旅で楽しい瞬間はチケットを予約したときだけです」。ボルボ・カーズでコーポレートストラテジーを担当するシニアバイスプレジデントのモルテン・レベンスタム氏はそう言う。

「実際の移動ともなるとあらゆる手続きに時間がかかるうえ、混雑した空港など、好ましいものではありません」。

そこでボルボでは将来のモビリティの提案としてバッテリーで走行する「360c」を提案したとする。

仕事へ向かうにも快適だ

「会議もエンタテイメントも睡眠も、飛行機のビジネスクラスで出来ることはすべてこのクルマで出来るようにしていけたらと思っています」

ボルボ・カーズのホーカン・サミュエルソン社長兼CEOは、発表会会場でそう語った。

ビジネスクラスのような仕様は寝ていける

例をあげると、フルフラット化できるシートを備えた1人乗り仕様というのが想定されている。起きているときはビデオも観られるし、食事だって出来る(トイレ以外はたいていのことが出来るようにするとのこと)。

現在おおくの自動車会社はVTOLあるいはドローンのように垂直飛行で空を飛ぶ車両の開発を計画していると聞くが、「360c」はむしろ地をゆく飛行機だ。

この車両を持つ配車会社と契約して、さまざまな仕様を用途に応じて社員のために借り出すようにすることで、経済効率は上がるし、社員のモティべーションも高まるはず、とボルボは言う。

レベル5という自動運転に対応しているため(そのためステアリングホイールがない)、高速など他の自動運転車とのコミュニケーションはTCP/IPのような通信プロトコルを用いれば比較的簡単とする。

キャビンを取り巻く細い帯が歩行者とのコミュニケーション用のLED

いっぽう、市街地も走ることになる。そのときは歩行者や自転車と遭遇する可能性が高い。横断歩道を渡らせるなどコミュニケーションは、車体に埋め込まれたLEDランプや音で知らせることを考えているそうだ。

カメラなどセンサーが豊富につき状況を把握する
「360」のところにナンバープレートのような個体ごとの認識番号が表示されることを考えているそうだ

「製品化にはあと15年はかかります。そのあいだにインフラを整えるなど多くの課題を解決したいと思います」。サミュエルソン氏はそう語った。

未来のクルマという言葉は、昔は実現不可能、という意味で使われていたけれど、いまはあらゆる可能性が出てきている。「360c」も、クルマという従来の概念ではくくれない存在である。

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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