既存のレクサスのSUVとはここが違う
レクサスUXは写真からの印象だとSUVと思われるかもしれない。でも車高は1540ミリに抑えられ、スタイリングもスポーティで、RXやNXといった既存のレクサスSUVとは一線を画している。
日本での発売は2018年末とも言われているが、ひと足先にストックホルムで欧州仕様の試乗会が開かれた。このクルマの出来がかなりよくて、運転の楽しさを堪能させてくれる出来だった。
いま女性が“守られ感があるから”とSUVを求める傾向が日本では強いようだけれど、かりに奥さんに相談を受けたら、レクサスUXを最有力候補に推すといいかもしれない。
2018年9月のストックホルムに用意されていたのは、2リッターガソリン仕様の「レクサスUX200」と、2リッターハイブリッドの「レクサスUX250h」だった。
これまでにぼくは、3月のジュネーブ自動車ショーや、8月のグッドウッド「フェスティバル・オブ・スピード」などで実車を観る機会があったけれど、実車に触れて乗り込んでみたのは初めてだ。
「都会派コンパクトクロスオーバー」とレクサスではこのクルマを定義しているが、たしかに実車の印象はゴツさが売りのSUVとはまったく違う。いかにも走りがよさそうな少し背の高いハッチバックである。
開発を総指揮したチーフエンジニアの加古慈(かこ・ちか)氏が「ハッチバックに負けたくなかった」と語ってくれたが、なるほど、市場のすきまにうまくハマりそうな独自のキャラクターがあると感じられた。
スバルのアウトバックやトヨタのC-HRなどとカテゴリー的には近いかもしれない。輸入車にはもっとライバルが多い。といってもレクサスUXの走りのよさはかなりキャラがたっている。パワー感のあるエンジンに、しっかりしたハンドリングはいちど乗ると忘れられないものだ。
ストックホルムでは市街地、カントリーロード、高速と、さまざまなシチュエーションを経験した。微速領域での扱いやすさ、時速30キロていどのタウンスピードでの十分感じる機敏性、高速での加速性や巡航性、そしてカーブでの安定性と、1日だけでもいい部分がかなりわかった気になった試乗である。
低回転域から実用的なトルクがたっぷり感じられるのは、ガソリンでもハイブリッドでも共通だ。エンジンを回してスポーティに楽しみたいというひとにはUX200がいいかもしれない。いっぽうオールマイティな使い勝手のよさではUX250hを推したい。
この2リッターエンジンに合わせて専用のチューニングを施したとレクサスがいうハイブリッドシステム搭載で、期待をはるかに上回るスムーズな加速性が大きな魅力なのだ。
電気モーターの恩恵で停止からの発進がいいのは、ハイブリッド車にいちどでも乗ったことがあるひとなら先刻知ってのとおりだが、加えてそのままアクセルペダルを踏み込んでいても、UX250hはトルクが落ちこむことなく、力強く加速していく。こんないいハイブリッド車には久しぶりに乗った。
室内の広さや乗員の着座位置などを徹底的に検証して、広い世代のひとが自然な姿勢で操縦できるようにしたというのがチーフエンジニアの加古氏のこだわりというが、たしかに175センチ超の男が4人、きゅうくつな思いをせずに乗っていられる。
小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。