身銭を切って買いたいクルマ

アウディA7スポーツバックの初代が2010年に発表されたときの驚きはいまもよくおぼえている。ファストバックというハッチゲートを備えた4ドアボディを持つ高級車なんて、存在しなかったからだ。

ハッチゲートを持つので荷物の積み降ろしが容易

後席はおとなも乗れる広さを持ちながら、それでも前席を重視したようなスタイリングゆえ、4ドアクーペなどと呼ばれた。そして軽快なイメージゆえ、他社からもこのカテゴリーに向けたモデルが次々と投入されたのだった。

このクルマに注目してもらいたいと思うのは、セダンでない高級車というコンセプトゆえだ。自分の楽しみのために身銭を切って買うなら、やっぱりドライバーを中心に設計されたクルマがいい――そう考えるひとにアウディA7スポーツバックはうってつけだ。

全長4970ミリ、全幅1910ミリ、全高1415ミリのサイズ

日本に導入される新型は3リッターV6ガソリンエンジン搭載のアウディA7スポーツバック55TFSIクワトロ。「55」とは排気量とパワーをベースにした新しい表記で、欧州にはディーゼルの「50」も存在する。

新型のよさは操縦の身軽さがうんと向上したことだ。250kWの最高出力と500Nmの最大トルクを発生する3リッターエンジンは、十分すぎるほどパワフルで、ひと言で表現するなら、気持ちいい。

A7スポーツバックの四輪駆動システム「ウルトラクワトロ」は低負荷時は前輪駆動で、状況を先読みして後輪も駆動する

ワインディングロードだろうが高速だろうが、走りに魅了される理由として、「ダイナミックオールホイールステアリング」という新機構の採用が大きい。前輪に合わせて後輪にも切れ角を与えるシステムである。

時速60キロ以下で小さなカーブを曲がるとき後輪は前輪と逆の方向に切れる。それで回転半径が小さくなって取り回しがぐんとよくなる。高速では同じ位相に切れるので、逆に操縦性が安定する。駐車場など狭い場所での使い勝手も驚くほどいい。

ダッシュボードには10.1インチと8.6インチという二つのコントロールパネルが収まり、スマートフォンのように操作できる

ドライバーのために考えられていると思わせるもうひとつの技術が「MMIタッチレスポンス」だ。従来の物理的なスイッチ類が大幅に減り、ナビゲーションやエアコンやオーディオの操作はタッチスクリーンで行う。

よく使う項目はアイコン化できるので、たとえばナビゲーションで自宅をアイコン化して画面においておけば、ワンタッチで目的地として入力できる。かなり利便性が高い。

写真の「S-line」はスポーティに仕立てられた仕様

インテリアは、MMIタッチレスポンスのための2つのTFTモニターでダッシュボードはハイテク感があるが、それにウッドやクロームやレザーといった“オールドワールド”の高いクオリティ感をうまく組み合わせている。

アウディA7スポーツバック55TFSIクワトロ「S-line」というスポーティな装備を持つ仕様が標準モデルで、価格は1066万円(税込)。楽しさを増やし、おそらく疲れは半減してくれる快適性ゆえ、ゴルフでも旅行でも、いいパートナーになるだろう。

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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