輸入車激戦区での勝算は?

ボルボ・カー・ジャパンが2018年9月25日から発売した「ボルボ V60」は日本では輸入車激戦区に入る車種だ。メルセデス・ベンツCクラス、BMW3シリーズ、アウディA4というドイツの競合に加え、SUVも多い。そこで勝算はあるのだろうか。

さきごろ試乗したのは、2リッターガソリンエンジン搭載の「V60 T5 インスクリプション」だ。このクルマでは主力グレードになりそうなモデルである。

タイヤまわりのパネルのふくらみを強調しスポーティな印象だ

外観的には、上級車種「V90」に通じるデザイン要素でまとめられている。とりわけフロントとリアのライトまわりのモチーフと、側面からみたルーフラインは、すぐにボルボとわかる。

ボルボ・カー・ジャパンでは「V90より市街地などでの利便性を重視するひとに向けて開発しました」とする。実際に4760ミリの全長はV90より175ミリ短く、全幅も1850ミリとV90より40ミリ狭くなっている。

それと同時に、スタイリング的によりスポーティに仕立てられているのもV60の大きな特徴だ。これでライバルと一線を画そうというのがボルボの製品戦略のようだ。

はたして197kW(254ps)の最高出力を持つ「T5」エンジン車に乗ると、期待どおりというか、走りも意外なほどスポーティだ。よく回るエンジンは走る楽しさを味わわせてくれる。

サスペンションシステムの設定はすこし固めに振っているようで、ハンドリングはしっかりしていて、車体の傾きも抑えられ、カーブを曲がるときが気持ちよい。

ちなみにトランクの容量は「クラス一」とボルボが自慢するように奥行きもあり、荷物がけっこうたくさん収まる。スポーツやキャンプが趣味のひとはいいだろう。山に出かけるひとは、それに加えてドライブという娯楽が手に入るのだ。

荷室は「クラストップ」とボルボが謳う529リッター

市街地での使い勝手もいい。走りの面では350Nmの最大トルクが1500rpmと低い回転域から発生するので、アクセルペダルをあまり踏み込まなくても力は十分と感じる。

インテリアも大きな魅力である。室内に凝るボルボの例にもれず、高級北欧家具で構成された室内を思わせる、造形美と素材と色づかいがライバルにはないものだ。

「T5 インスクリプション」のブロンド/チャコール&ブロンドという組み合わせの内装

自分で買ったクルマは外から観ている時間より室内にいる時間のほうがずっと長い。そう言うのは自動車のインテリアデザイナーだが、冬に外出の機会が減るため室内を可能なかぎり居心地よくしようという北欧のスタイルに通じるものを感じる。

ボルボのよく出来たインテリアは、とりわけ家族など同乗者にはまたとない“もてなし”になることは知っておいてもいいかもしれない。

「センサス」と呼ばれるタッチコントロール式のインフォテイメントのコントローラーがダッシュボード中央に

ラインナップは、パワートレインが3種類。2リッター4気筒ガソリンエンジンに前輪駆動の「T5」(499万円~)がまず導入された。2019年には、2種類のハイブリッド車が追加される。

「V60 T6 Twin Engine AWD」(749万円)は196kW(253ps)と350Nmの2リッターガソリンエンジンに160Nmの電気モーターを組み合わせたモデルである。

最上級車種の「V60 T8 Twin Engine AWD」(819万円)はさらに出力が上がる。2リッターエンジンは233kW(318ps)と400Nmとパワーアップされている。電気モーターのトルクは同じ160Nmだ。

自動車どうしの事故のうち最も多いという正面衝突における被害を軽減するための操舵支援やブレーキ支援など、新しい安全運転支援システムの採用もV60でみるべき点といえる。

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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