SUVのかたちをしたスポーティカー

キャデラックのXT5クロスオーバーは2017年から日本で販売開始されている。全長4825ミリ、全高1700ミリのボディに、3.6リッターV6エンジン搭載で、四輪駆動である。

全長4825ミリ、全幅1915ミリ、全高1700ミリ

スタイルはリアウィンドウが前傾していて、とりわけ側面からみると、かなりユニークだ。実用車でなく都会的なスポーティさが身上である。いちどおぼえたら忘れない個性がたっている。

昨今これだけ大きなエンジンを搭載したクルマは少ない。希少な魅力ということができる。368Nmの最大トルクを6000rpmで発揮するという、エンジン回転数を上げるにしたがってもりもりと力が出る設定も貴重だ。

実際に運転すると、ドロドロドロっとトルクの力で走るイメージは皆無。足まわりはシャキッとしていて、ハンドリングもスポーティだ。ステアリングホイールの切れ角少なく、車体は気持ちよく向きを変える。しかもエンジンを回せば回すほど活発になって、SUVのかたちをしたスポーティカーだ。

乗り心地はすこし堅めで、昨今のドイツのスポーティカーに通じるものを感じる。広くて贅沢な作りの室内は後席も居心地ばつぐんだけれど、運転席がもっともいい場所だろう。走れば走るほど好きになれるクルマだからだ。

シートは革張りで背中の部分にキャデラックの「クレスト」というエンブレムを思わせる型が入っているなど凝った仕上げだ。メイプルシュガーと名付けられたブラウン系の内装は、ほかでは手に入らない独自性がある。

コクピットは使い勝手がよい

ぼくは機会あるごとに乗っているけれど、どんどん好きになれるクルマという印象がある。キャデラックは乗らず嫌いはもったいない。ATSやCTSといったセダンもビシッと走るうえに、ほかでは手に入らないキャラクターがあるからだ。このXT5クロスオーバーを含めて、じつは米国車(キャデラックを含むゼネラルモーターズの製品)はがんばっている。

大きなサンルーフなど快適性が高い

素材も、レザーに加えて、スウェードレザー調、ウッド、クローム、ガラスと豊富で、複雑に組み合わされている。押しつけがましさはなく、パーソナル感が強いので、ドイツ車の黒一色の内装に飽きているひとにも魅力的に映るだろう。

荷室の使い勝手はよくレジャーにも使いやすい。大きなパノラミックサンルーフは後席乗員へのよいもてなしになるし、BOSEのアクティブノイズキャンセレーションシステムの恩恵で音楽(アップルカープレイなど)を楽しむことができる。

LEDを使ったライトが前後に使われていて一目でキャデラックとわかる個性を作っている

日本車のなかでキャデラックに正面からぶつかるクルマを探し出すのはむずかしい。米国の富裕層が支えているキャデラックだけに、しっかりした世界観で製品づくりをし、提供するべき価値がよく分かっている。そこがクルマでは最も大事なことなのだ。

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

問い合わせ情報

問い合わせ情報

ゼネラルモーターズ・ジャパン