ホテルのプチ断食で無理なく体調をリセット～ザ・プリンス パークタワー東京

「断食」というと過酷なイメージがあるかもしれないが、その不安は、今回のプチ断食の舞台「ザ・プリンス パークタワー東京」に一歩足を踏み入れた瞬間にかき消された。東京のど真ん中に建つシティホテルのロビーは上質かつ落ち着いた雰囲気で、寺や専門施設のようなストイックさとは無縁。リラックスさせてくれる。

通常の宿泊と同様にフロントでチェックインを済ませると、その場でプランについての説明を受ける。断食中、激しい運動は、体がびっくりするのでNG。専用の食事はインルームダイニングで提供されるとのことなので、それぞれの希望時間を伝えたら、同意書にサインし、いよいよ部屋へ。プチ断食の始まりだ。

ドアを開けると、奥の窓の向こうには緑が広がっていた。このホテルの客室には、都内のシティホテルでは珍しくバルコニーが設けられていて、出れば芝公園の自然を間近に感じられる。秋が深まれば紅葉も楽しめるだろう……そんなことを思いながら視線を移すと、そこには東京タワーが高々とそびえていて、これまた圧巻の眺望。東京に暮らす人間にとっては見飽きたはずの風景だが、非日常的なホテルの客室から眺めると、新鮮に映るから不思議だ。

ミネラルウォーター2本（500ml）は好きなだけ飲んでいい、とのことだが、冷蔵庫を開けてみると、中身は空っぽだった。邪念を払うにはその方がいいに違いないが、さきほどかき消されたはずの不安がにわかに蘇ってきたので、気を紛らわそうと地下2階の「スパ＆フィットネス」へ行くことに。このプランでは食事と激しい運動を除けば、あとは自由にホテルライフを楽しめるのだ。

「スパ＆フィットネス」には都内では貴重な天然温泉も。本来は会員制の施設だが、このプランでは、滞在中にかぎり無料で何度でも利用可能。地下1600mから汲み上げられるナトリウム‐塩化物強塩温泉は、神経痛や筋肉痛に効果があるのだとか。

約束の時間になると、お待ちかねの夕食が部屋に運ばれてきた。メニューは「茶碗蒸しとアスパラスープの二層仕立て」のみ。見た目は簡素だが、医師と栄養士が監修しているだけあって、これが実によく考えられている。

卵は良質なたんぱく質や、脂質代謝を助けるビタミンB2を含む優秀な食材だ。それを茶碗蒸し仕立てにすることで噛むという動作が必要になり、その結果、膨満感がもたらされ、消化も促進される。また、アスパラガスは抗酸化ビタミンであるビタミンA・C・Eを含むため、体を活性酸素から守ってくれる。野菜をたっぷり使ったピューレも腸内環境を整え、便秘を予防してくれる。まさにいいこと尽くめの一皿なのだ。

実際、口にしてみると、茶碗蒸しに使われている椎茸の食感が効果的な変化球となり、食べ飽きることがなかった。また、塩と胡椒が添えてあるので、淡い味付けの単調さもクリアできた。220kcalしかない割に腹持ちが良いのもいい。おかげで、1日目はストンと眠りに就いてしまった。

翌朝。体が軽く、心なしか肌の調子もいい。さすがに少し空腹だが、しんどくて耐えられないことはない。そうこうしているうちに朝食が届けられた。

ジュースといいつつもスムージー仕立てなので、一気に飲み流す感じではなく、噛みしめながら飲むという感覚でゆっくり摂取できたせいか、満足感が得られた。ちなみに、この時点で編集部員Aの体重は400g減。

さて、1泊2日のプチ断食プランも最終章。ランチには、回復食としてお粥が提供された。

五穀米を使うのは、食物繊維の力で腸の動きを活発にするため。また、ビタミンB1が糖質代謝を助けるので、断食を終えて活動量が増えるタイミングに最適とのことだが、とろみのあるカニあんのおかげで、シンプルな味付けながら満足感が得られた。口にするものの流動性は重要のようだ。

断食期間が短いせいか、今回の食事制限は、人間ドック検診前に食事を取らないのと似たような感覚で、無理なくトライできた。食欲をそそる刺激や情報が遮断されるので、いつかは断食を体験してみたいけど、なかなか覚悟できないという人にとっては、ホテルという上質な空間でリラックスしながら自分の体と向き合い、乱れがちな食生活を修正し、内臓を休めるのは得策と言える。また、不必要に反省モードに追い込まれることなく、プチダイエットできるのもいい。プチ断食プランが2011年から続いているというのは、この気軽さこそが多くのリピーターを生んでいるのだろう。