新しい機構「BSG」を搭載したC200
ちょっといいセダンを買おうと思ったら、まっさきに思い浮かぶ1台が「メルセデス・ベンツCクラス」ではないだろうか。ブランド性といい品質感といい、そしてサイズをはじめとする使い勝手といい、かなりいい線をいっているからだ。
2018年9月にラインナップ全体がマイナーチェンジを受け、安全運転支援システムなどがアップデートされた。同時に追加されたのが「メルセデス・ベンツC200アバンギャルド」である。これが注目のモデルだ。
C200アバンギャルドの最大の特徴は、新エンジンにある。「BSG」と呼ばれる新しい機構を搭載しているのだ。これはベルトドリブン・スターター・ジェネレーターの略で、いま注目の技術である。
スターターとジェネレーターをモーターで回すことで、スムーズな発進を目的とした技術である。直接モーターを組み込んで歯車で回す技術は、すでに日本でも発売しているS450やCLS450に搭載ずみだ。
BSGはそれよりすこし簡略化したシステムだが、ターボチャージャーが動きだすまでを、48ボルトのバッテリーを使った電気モーターでカバーするという考え方は基本的に同じだ。
はたして、これが思った以上にパワフルである。
私はこの新しいCクラスに軽井沢で乗った。軽井沢プリンスホテルのあたりから、中軽井沢を経由して鬼押出し園のあたりまでが走行コースだ。途中は中速コーナーが連続するワインディングロードがあって、なかなか楽しい。
あいにく雨がざんざ降りだったので自制心を働かせたけれど、それでも上りは空いていて、C200アバンギャルドのピックアップのいい加速と、気持ちのいいコーナリングを楽しめたのだった。
C200アバンギャルドは1.5リッター4気筒エンジン搭載なのだけれど、135kW(184ps)の最高出力と280Nmの最大トルクを持つばかりか、そこに最大トルク160Nmぶんが上乗せされるのだ。
発進直後から電気モーターのトルクを使うハイブリッドなみのスムーズさで加速し、そのあと2000rpmあたりでターボチャージャーにバトンタッチだろう。トルクの落ち込みを感じることなく、アクセルペダルを踏み続けるかぎり、いってみれば一直線に加速していくのだ。
私は先述したS450やCLS450でISGによる加速のよさを実感していただけに、あるていど期待していたのだが、それに充分応えてくれた。エンジンがパワフルなだけでなく、コーナリング中の車体のロールを抑えめのサスペンションといい、走らせて楽しいクルマに仕上がっている。
足回りの設定は少し硬めで、速度を上げていくと安定して、本領を発揮するかんじだ。発進のあともBSGはエンジントルクを調整してスムーズなシフトアップに貢献するなど、さまざまな働きを見せる。
私が乗ったのはセダンの後輪駆動版だった。ステーションワゴンにもこのエンジンを搭載している。さらに「4MATIC」と呼ばれる4輪駆動仕様も、どちらの車型にも用意されている。幅広いユーザー層が新世代の1.5リッターBSGの恩恵を受けられるようになっているのだ。
新しいCクラスは外観の一部に変更を受けている。エアダムの形状やリアコンビネーションランプの意匠が変わった。さらにC200アバンギャルドにはマルチビームLEDヘッドライトが採用されている。
ダッシュボードも一部意匠が変更された。中央には10.25インチのTFT液晶モニターが備わるとともに、ステアリングホイールには親指の腹でさまざまな操作が行えるタッチコントロールも搭載されている。
室内のアクセント照明が64色設定されているアンビエントライトも装備された。メルセデス・ベンツが始めたこの室内エンターテイメント、気分に合わせて赤だ青だと選んでいくのもなかなか楽しい。
C200アバンギャルドに乗ると、途中で改良を放棄することなく、ていねいに技術面でアップデートされているのに感心する。ライバルの多い市場だが、最前線を走っているのが印象ぶかい。
C200アバンギャルドの価格は552万円だ。ステーションワゴンは576万円である。C200 4MATICアバンギャルドだとセダンが580万円、ワゴンが604万円となっている。
価格でいうと1.6リッターのC180アバンギャルド(セダンで489万円)というモデルもあり、こちらの「AMGライン」には電子制御のアダプティブダンピングシステムを組み込むことも出来る。こちらもスポーティな設定で、とばせばどんどんよさがわかるといえる。
ソフトな乗り心地を求めるひとはディーゼルの「C220dアバンギャルド」(セダンで578万円)という選択がある。これもふんわりとした乗り心地が印象的だ。
というわけで、Cクラスは車種が豊富で充実している。ガソリンエンジンのスムーズさが大好きというひとには、やはり、いま買うべきクルマとしてC200アバンギャルドを勧めたい。
2018年10月19日に日本発売されて話題になった新型「メルセデス・ベンツAクラス」の「MBUX」の喋る機能は、OSの世代が異なるCクラスには搭載されていない。念のため。
小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。