接待とは1つの網を介した「場の共有」である

「焼肉には人を喜ばせる要素が詰まっている」と小池さんは焼肉の魅力を説明する。とりわけ接待におけるメリットは「ライブ感」だという。生の状態から料理が出来上がっていく過程は大人をもワクワクさせるものだ。焼ける様子を見守りながら、1つの網を囲むことで、「場の共有」ができる点でも焼肉接待は優れているというのだ。網の上という共通の関心事が卓上にあることで、相手との心理的距離をぐっと縮めることができる。

焼肉接待を成功に導く5条件

小池さんによると、焼肉接待の店選びにおいて大事なポイントは次の5つに集約されるという。

1. 上品な個室
2. 肉質の良さ
3. プロが焼く
4. 心地よい接客
5. 場を盛り上げる料理


この5つのポイントを満たす店の一つとして、今回、小池さんが挙げてくれたのが「蕃 YORONIKU(えびす よろにく)」だ。同店での体験に即しながら、接待に最適な焼肉店の条件を説明していこう。

1. 上品な個室

個室は通常の接待においても重宝される。これまでは高級感があり、もてなしの気持ちを表せるような個室は少なく、接待には不向きだと思われていた。しかし、近年では高級感のある個室を完備した焼肉店も増加傾向にある。普段、個室で焼肉を食べる機会はそう多くはないので、ちょっとした特別感を演出できる点も接待に向いているといえる。

2. 肉質の良さ

薄切りシャトーブリアン。歯が空振りしていると錯覚するほどに柔らかい
同店定番のシルクロース。7500円・9500円(税抜)の2コースの一品として提供される。同店はコースに追加する形でアラカルトメニューも用意している

肉に関しては上質なことは当たり前。同店では代表の桑原 VANNE 秀幸(くわはら ばん ひでゆき)さんが選びぬいた雌の和牛を提供している。驚くほどの旨い肉を食べれば、その感動を口に出して伝えたくなるもの。自然と表情も柔和になり、コミュニケーションも円滑にすすめることができるだろう。

また、接待相手を考慮した肉選びも重要になる。接待を受ける側は意思決定層であり、年齢が高い場合が多い。味が良いことはもちろんだが、脂がさっぱりしていてしつこくない雌牛の肉を提供してくれる店を選ぶのもコツだ。

3.「プロ」が焼く

年間200回は焼肉を食べるという小池克臣さん(左)と「よろにく」代表の桑原 VANNE 秀幸さん(右)

スタッフが焼いてくれるサービスは、近年の焼肉店のトレンドだ。このサービスこそが焼肉接待を可能にした一番のポイントと言ってもいい。接待では相手のお酒の進み具合に気を配りながら、気の利いた話をしなければいけない。ただでさえ、手いっぱいになる接待の席で自ら肉を絶妙な加減で焼くことは難しい。

また、肉の焼き加減は人によって好みが異なる点も厄介だ。気を利かせてレアで焼いたら、相手はしっかり焼いた肉が好きだった、ということも起こりかねない。

しかし、同店のスタッフは最高級和牛のポテンシャルを最も引き出す焼き方を知っている。それはプロとして肉に向き合った膨大な経験に裏付けられた特別な「スキル」で、素人が簡単にたどり着ける領域ではない。したがって、焼き加減という次元を超えて「誰が食べてもうなる焼肉」を提供することができる。代表の桑原さんは「とにかく焼いて食べさせて、覚えてもらった」とスタッフの教育についても、投資を惜しまないようだ。