二ツ目時代に高座に上がっていた店
2012年に真打に昇進してから、寄席や落語会に呼んでいただく機会が増え、一日に数カ所の会場を回る日も多いです。
寄席の合間に喫茶店でひと息つくときには、仮眠をとったり、考え事をしたり、雑誌に連載中の原稿を書いたりして過ごします。執筆に使うのは携帯電話。「よくガラケーで書けますね」って言われますけど、パカッと開いて一文字ずつ押す感じが好きなんです。
浅草演芸ホールで寄席があるときの休憩場所は「茶や あさくさ 文七」です。美味しいコーヒーを飲んで、お腹がすいたらBLTサンドを注文します。この店は高座があって、プロ・アマ問わず落語会を開けます。僕も二ツ目時代には高座に上がらせてもらっていました。
寄席は年中無休。昼の部と夜の部があって、それぞれの部で10日ごとに出演者が変わります。10日間は出演順が変わりませんから、トリ(主任)を務める人が初日、中日、楽日に、ほかの出演者にご馳走するのが慣例になっています。
お弁当を用意される方もいますが、僕の場合は打ち上げをします。利用するのは普段と同じ、気軽に過ごせる居酒屋がほとんどです。先輩もお誘いしやすいですし、自分自身も居心地がいいですから。
先輩に連れて来てもらったのが縁で
池袋演芸場後によく行くのが、「居酒屋 八丈島」です。二ツ目時代に先輩に連れて来てもらって、以降利用しています。八丈島産の魚、あしたばの天ぷら、島らっきょう……と、ビールが進みます。
酒は、あれば何でも飲みます。噺家は体育会系に見えるかもしれませんが、弟子や後輩に強制はしません。僕も強制されたことはないですし。(酒を無理に)飲むより気を使えっていう文化ですね。
いつもプロフィールの趣味欄にはなんとなく「料理」って書いていますけど、そんなに作りません。たまに思いつくままカレーを作り出しますが、家族からは「まずい」「カレー(作りを)なめんな!」って言われます。市販のカレールーを使っているのに、謎です。薄くなったと思ってルーを足して、今度は濃くなったと思って水を入れてと繰り返していくうちに、まずくなるんでしょうね。
依頼された仕事はほとんど断らないので、テレビのバラエティ番組にも出ますし、雑誌のインタビューも受けます。見てくれた人が落語に興味を持って寄席に足を運んでくれたら嬉しいですし、それが今の自分のポジションなのかなと思っています。
春風亭一之輔/Ichinosuke Shunputei
落語家
1978年、千葉県出身。2001年日本大学卒業後、春風亭一朝に入門、前座名「朝左久」。04年に二ツ目昇進、「一之輔」と改名。12年3月に真打昇進。寄席や独演会、落語会のほか、Web「BOOK PEOPLE」「週刊朝日」「EX大衆」で連載中。JFN系ラジオ「SUNDAY FLICKERS」ほかに出演中。
茶や あさくさ 文七
多くの二ツ目たちも落語会を行った、高座のある喫茶店
住所:東京都台東区浅草1‐21‐5 エリカビル2F
TEL:03‐6231‐6711
営業時間:11時~20時(落語会などの開催時は22時)水曜休(不定休あり)
席数:38席(落語会など開催時は最大240人まで入場可能。要木戸銭)喫煙可 カード利用不可
居酒屋 八丈島
魚と地酒で島気分に酔いしれる
住所:東京都豊島区西池袋1‐22‐4 錦山園ビル1F
TEL:03‐5391‐5810
営業時間:10時~翌3時(日曜~23時)無休
席数:45席 カード不可 喫煙可
公式サイト
text:Minako Hoshikawa
photograph:Kicchinminoru
from:PRESIDENT 2018.10.1