スタイリングコンセプトは「クロスオーバー」
クルマを選ぶとき、ひとそれぞれ基準があるだろう。力強く見えて、視界がよく、いざというとき悪路も走れれば重宝しそう……そう考えてSUVを選ぶひとは少なくないのでは。でもいっそ、もっと選びの基準をしぼって、都市で快適に乗れるクルマというのはどうだろうか。
2018年の晩秋に発売開始されたLEXUS(レクサス)UXは「クロスオーバー」なるスタイリングコンセプトを謳っている。SUVとハッチバックのクロスオーバーという意味で、大きすぎず、(背が)高すぎず、操縦する楽しさと扱いやすさをねらったモデルだ。
家族というより2人ででかけることを重視したパッケージングで、全長4.5メートルというサイズは、じつは市場で必要とされていたものといえるかもしれない。
モデルラインナップは、2リッターガソリン4気筒「レクサスUX200」と、2リッターエンジンに電気モーターを組み合わせた「同UX250h」だ。前輪駆動が基本で、ハイブリッドには4輪駆動仕様も用意されている。
ドライブした印象は、きびきびとしている。ガソリン仕様もハイブリッド仕様も同様に、加速もなかなかよくて、ステアリングホイールを切ったときの車体の動きも俊敏だ。乗り心地も快適なので、市街地、高速、それに山道とどこでもドライブを楽しめるクルマである。
アクセルペダルを踏み込んだとたんに最大トルクを発生する電気モーターの特性を活かしたハイブリッド版のほうが、たしかに、瞬発力にすぐれていてよりスポーティな雰囲気が強いように思うけれど、しかし、ガソリン版もエンジンを回して走るおなじみの楽しさを持っていて、これはこれでよいのだ。
スタイリング的には、エッジの効いたラインがボディ側面を特徴づけている。じつはこのラインはタイヤハウスまわりの合成樹脂性のモールドを含めて、みな空力的な働きを担っているのだそうだ。
レクサスUXで目を引くテールフィンのような形状をしたリアコンビネーションランプは、走行中の空気の流れをコントロールして、走行安定性を高めている。とりわけ速度が上がると、たとえば高速道路でレーンチェンジをした際の安定性に寄与している、とレクサスでは説明している。科学的なかたちなのだ。
いっぽうでインテリアは、「内と外との境界を曖昧にする日本の建築思想に着想を得た」とレクサスが説明するように、内部のインストゥルメントパネルからフェンダーへと連続するような造型をめざしたのだそうだ。こちらは科学というより人間のエモーションを大事にした考えに根ざしている。
着座位置は一般的なSUVほど高くないので乗り降りは楽だ。いっぽうで視界はふつうのハッチバック車より遠くが見渡せる。いいかんじの折衷策といえるだろう。昨今のドイツ車のようにモニター内で基本的な操作を行うタイプではなく、物理的なスイッチでエアコンなどをコントロールするが、個人的にはこちらが好きだ。
アームレストに左手を載せたまま、自然と指先でオーディオが操作できる「遠隔オーディオ」はレクサスUXならではの特徴だ。選曲をひんぱんに行うひとには便利ではないかと思う。
ガソリンエンジンの「UX200」(390万円~税込)と、ハイブリッド「UX250h」(425万円~税込)ともに、ベースモデル、装備レベルの上がった「version C」、よりぜいたくな「version L」が設定されている。よりスポーティな仕様が好きだというひとには「F SPORT」もある。
小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。