京都に来て20年余、馴染みの店も増えました

東京・有楽町のブティックで洋服をすべて揃えています。店長が僕のワードローブを全部知っていて、コーディネートしてくれるんです。マグマの赤が僕のトレードマーク。

実は京大に来て3年くらいは、白衣を着て授業をしていました。あるとき、授業の後にパーティーがあったのでオシャレして行ったら、学生の目つきが違った。若い人は服装に関心があるということに気づいたんです。それで次の週から服装にこだわるようになって。赤い革ジャンとかスカジャンとか着ていくと、すごくウケがいい。結果的に、学生が授業に関心を持ってくれるようになりました。毎回、服を替えていくので、ボーナスは全部洋服代に消えます(笑)。

僕は東京の生まれで、京都に来たのは41歳のとき。この都市はたいへんでね。お店に食べにいっても、最初は「東京から来られたのね」ってぜんぜんフレンドリーじゃない。打ち解けるまで10年かかりました。京都に来て今年で21年ですから、店のレパートリーも増えたし、行きやすくもなりました。

「多幸金」は、「こういう店を知らなアカンよ」と超グルメな知人が教えてくれたお店。もともとはおでん屋さんで、酒の肴やお刺し身、揚げ物、煮物、ごはんものなどいろいろ揃った割烹です。おでんは関東風も関西風もどちらも好きなんですが、食材本来の味を生かす薄味の京都のおでんにだんだん慣れてきて、今はこっちのほうが好きになりましたね。

イタリアのワインと料理に詳しくなれる店

もう一軒の「アフェット」は、中・高・大ずっと一緒だった同級生が連れていってくれたイタリア料理の店。オーナーソムリエ自ら、海外で購入してきた珍しいワインなどをペアリングで出してくれるんです。ワインのうんちくを聞くのも楽しいし、料理もどこから取り寄せている食材なのか一つひとつ教えてくれて「なるほどな」と勉強になる。つきっきりで説明してほしいから、お店が暇なときに行くのがポイントですね(笑)。

僕は食事も睡眠も、体に従うようにしています。お腹が空くまで食べない、眠くなるまで寝ない。食べることも寝ることも、体の要求が起きるまでしません。人間は文明が積み上がれば積み上がるほど本来の生物学的な生き方から遠ざかる。それを戻すものが食事だと思っているんです。自分はいつ食べたいのか、何を食べたいのか、徹底的に見つめるとすごく豊かになる。欲しいものを欲しいときに欲しい量だけ食べるんだから、おいしくないわけないでしょ。

鎌田浩毅/Hiroki Kamata
京都大学教授
1955年、東京都生まれ。東京大学理学部地学科卒業後、通産省(現・経済産業省)などを経て、97年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。専門は地球科学・火山学・科学コミュニケーション。京大の講義は教養科目1位の評価。著書に『理科系の読書術』『地球の歴史』(ともに中公新書)など多数。
鎌田浩毅のホームページ http://www.gaia.h.kyoto-u.ac.jp/~kamata/

多幸金

食材本来の味を生かす、京風おでんと鱧料理
大正12年に創業し、現在3代目。看板メニューは創業以来の京風おでん。「四季を通じての名物は「玉子宝楽」(創業以来秘伝のおでん)。京ならではの旬の食材を生かした逸品料理も。2階には座敷2部屋があり、会席料理のコースも用意。その他お弁当なども。
住所:京都府京都市上京区中町通り丸太町下ル駒之町559‐20
TEL:075‐222‐1540
営業時間:17時~23時 月休(営業の場合もある)
席数:1階はカウンター9席、テーブル8席 2階は座敷2部屋(2階は予約のみ)全席禁煙 カード可
公式サイト

affetto

料理に合わせて、珍しいワインが楽しめる、“ペアリング”の名店
北イタリア・ピエモンテ州で研鑽を積んだシェフが腕をふるう。基本はコース料理3種(7000円、8900円、1万2500円)だが、お客に合わせて自由自在に料理とワインを提供する異色の存在。グラスワイン900円~。税込、サービス料10%。
住所:東京都港区麻布台3‐4‐12 麻布台ロイヤルプラザB1
TEL:03‐3568‐3028
営業時間:11時30分~15時(事前予約制)、18時~22時(LO)日休
席数:カウンター4席、テーブル14席、個室1部屋(8名まで)全席禁煙 カード可
公式サイト

text:Misako Nasukawa
photograph:Kunihiro Fukumori/Yuta Fukizuka
from:PRESIDENT 2018.7.30