日本の美意識が貫かれた和菓子店

銀座中央通りに面した「ポーラ銀座ビル」2階に入っている「HIGASHIYA GINZA」は、感性を刺激させられる和菓子店だ。高い天井に洗練された陳列棚。菓子に目を向ける前に、モダンな和の空間美に目を奪われる。同店の社長であり、デザイナーでもある緒方慎一郎氏が和菓子店を手がけた思いを、広報の北坊あいりさんが代弁してくれた。

「和菓子は日本の伝統的な文化であり、プロダクトとしての魅力もある。より深く日本文化の世界観を表現したいとの想いから、和菓子のみならず、店舗やパッケージのデザインに至るまですべてを手がけています。2003年に中目黒で創業し、2009年、国内外に向けた発信の拠点として「HIGASHIYA GINZA」をオープンさせました」

西洋の菓子に比べてどこかかしこまったイメージのある和菓子を、私たち現代人になじむ形で提案できないだろうか……。“現代における日本の文化創造”をコンセプトに、建築、インテリア、グラフィックなど多方面で活躍する緒方氏ならではの思想がこの店にはつまっている。

モダンな空間で、和菓子を吟味するのも楽しいひと時だ

バターやナッツも使った、独創的な“ひと口果子”

今回、おすすめの手土産として紹介するのは、看板商品の「ひと口果子」。駄菓子のあん玉から着想を得たという小さな菓子で、常時9種が店頭に並ぶ。餡子を主体に洋の素材も巧みに取り入れた、独創的な味がそろっている。

例えば、黒糖焼酎に漬け込んだレーズンを抹茶餡でくるんだ「萌葱(もえぎ)」、紫芋餡でカシューナッツをくるんだ「濃紫(こいむらさき)」。ナツメヤシに発酵バターとくるみをはさんだ、一番人気の「棗(なつめ)バター」。また季節商品として、二十四節気ごとにその時季にふさわしい素材を用いた限定品も用意している。

手前は、「ひと口果子」のなかで一番人気の「棗バター」

箱は、4個、9個詰めの桐箱があり、自分で好きなものを選んで詰めてもらうことができる。日本的な落ちつきある色彩が箱に整列した様は雅でありながら、モダンな印象だ。

ところで、気づいた方もいると思うが、商品名には「ひと口“菓”子」ではなく“果”の字があてられている。北坊さんによると、「菓子の原点は、木の実や果実であったといわれています。

人々が収獲の歓びをわかち合っていた、そんな時代の菓子に想いを馳せてつくったことから、果実の“果”を使い、『ひと口果子』と名づけました」とのこと。店名の「HIGASHIYA」にも、「日々、愉しめる果子を届けたい」という想いが込められている。クリエイティブな美意識が細部にまで宿った同店の看板商品は、思わず人に見せたくなる手土産になるだろう。

和菓子×茶または酒のペアリング

売り場の奥にある茶房では、この「ひと口果子」5種類を、それぞれにふさわしいお茶、あるいは酒と組み合わせて提供するメニューがある。例えば、「棗バター」の場合、お茶なら自家製ほうじ茶を。酒なら、味醂を加えた赤ワインをペアリング。くるみ入りのこし餡にココアパウダーをまぶした「桧枝(ひわだ)」ならば、お茶は三年番茶を、酒はシングルモルトを合わせて提供するといった具合だ。特に酒の合わせ方には意外性があり、一度体験しておけば、手土産として差し上げる際にヒネリのきいた話の種になるだろう。購入の際に茶房へ寄って試してみるのも手だ。

【店の方から一言】
「茶房では、現代の“日本のティーサロン”をコンセプトにお茶、甘味、お食事などをご用意しています。目の前でお茶をお淹れする茶室もございますので、心ゆくまでお寛ぎください」(広報)

問い合わせ情報

問い合わせ情報

「HIGASHIYA GINZA」
東京都中央区銀座1‐7‐7 ポーラビル2階
TEL:売店 03‐3538‐3230 茶房 03‐3538‐3240
商品:ひと口果子
価格:4個入り1500円、6個入り2100円、9個入り3150円(すべて税別)
販売:1箱から
日持ち:冷蔵で4日間
営業:11時~19時 茶房は11時~18時(L.O.)無休
*南青山に、蒸し立ての饅頭や手土産菓子を取りそろえた姉妹店の「HIGASHIYA man」がある。
ひと口果子も販売。


text:Yoko Yasui
photograph:Hiroshi Okayama