まずは超一流のホスピタリティに酔いしれる

「リッツ・カールトン」はホテル王と呼ばれたセザール・リッツが作り上げた最高級ホテルチェーンだ。「ザ・リッツ・カールトン京都」も一流のホスピタリティを格付けする世界有数のトラベルガイド『フォーブス・トラベルガイド』2018年のホテル部門で関西初の5つ星を獲得したが、最高峰とされるホスピタリティを、車寄せに降り立った瞬間、早速、実感させられることになった。筆者がこのホテルを取材で訪れたのは2回目だったにも関わらず、ゲストサービスのスタッフは私を名前で呼んで出迎え、レセプションへとエスコートしてくれたのである。

レセプションエリア。組子細工や漆塗りなど、京都の伝統工芸が細部にまで散りばめられたモダンな空間

着物姿の女性スタッフに案内され、客室に入ると思わずため息が漏れた。大きく採られたガラス窓の向こうには鴨川が流れ、そのさらに奥には東山三十六峰が広がり、それはあたかも優美な一枚絵のようだったからだ。まるで眺め飽きない。京都は街歩きも楽しいが、籠る歓びも得られる――洗練された空間でデイベッドに身体を預け、新鮮な発見をしたような気分で物思いに耽っていたら、いつの間にか時計の針が進んでいた。

「ザ・リッツ・カールトン京都」の象徴ともいうべきゲストルーム<ラグジュアリー>。すべての部屋が52平方メートル以上あり、ゆったりと寛げる。ベッドマットレスはシモンズによるオリジナル。シーツはイタリアの名門ブランド「フレッテ」で、しかも600スレッドカウント&120番手の双糸! 最高の寝心地だ
鴨川二条大橋畔に立つ「ザ・リッツ・カールトン京都」の外観はこんな感じ
ガラス張りのバスルームには18.5インチのTV付き。英国王室御用達のブランド「アスプレイ」のアメニティに、昔ながらの手作り製法にこだわる「京都しゃぼんや」の石鹸、ネスプレッソコーヒーメーカー、ネスレティーサーバーなどのアイテムが「ザ・リッツ・カールトン京都」の客室の上質さと快適さを引き立てている

夕刻。館内のイタリアンレストラン「ラ・ロカンダ」でディナーをいただくことにした。あくまで個人的な話だが、京都に滞在する際、ホテルで夕食をとることはあまりない。京都は美食の宝庫ゆえ、開拓する楽しみがあると感じているからだ。が、「ラ・ロカンダ」の存在は以前から気になっていた。店内には、藤田財閥の創始者である藤田伝三郎氏の別邸「夷川邸」が移築されている。今回は足を踏み入れる絶好の機会だと思った。

イタリア料理「ラ・ロカンダ」に移築されている「夷川邸」。明治41年築の建物で、部屋には歴史的価値の高い調度品が残り、プライベートダイニングとして利用されている

供されるのは国内外から調達した高級食材を使ったイタリア料理のコース。前菜からデザートまで計8品で構成されている。厨房で腕をふるうのは昨年6月に料理長に就任したという小澤達也氏。聞けば、東京とイタリアで修業を積まれたそうだが、その仕事は実に構築的である。素材を活かすイタリア料理の伝統的な技法を踏まえながら、フランス料理を彷彿とさせるような繊細で美しい盛り付けを両立していて、そのセンスに心を動かされた。実は最初は8品も食べきれないのではないかと心配していたのだが、ソムリエ厳選のワインペアリングも相まって五感が刺激され、するすると胃袋へ。

世界各国から揃えたチーズや生ハムを保管するウォークインセラーもあるとのことだが、今回はお腹に余裕がなかったので、次回の訪問に持ち越すことにした。

2日目はエグゼクティブに人気のサイクリングツアーへ

今回、「ザ・リッツ・カールトン京都」に滞在してみようと決めた理由のひとつが充実したゲストアクティビティだ。

このホテルには有料・無料含めて20を超えるプログラムが用意されている。例えば、獺祭テイスティング、ランニング、アートツアー、ミニチュア日本庭園造りなど、上質で特徴のあるものが目白押しだ。なかでもサイクリングツアーは日本人ゲストから好評を得ているらしい。「日本の方は1泊2日で滞在することが多く、その限られた時間の中で京都を満喫していただくには最適です」(ザ・リッツ・カールトン京都 PR&マーケティング マネージャー 山集杏里さん)と教えていただいた。

今まで京都に関しては歩いて楽しむ派だった。が、せっかくの機会だし、しかも「ザ・リッツ・カールトン京都」で体験するサイクリングである。もしかすると何か違う景色が見えてくるかもしれない。そう想い、2日目の朝、サイクリングツアーに参加することにした。

サイクリングツアーには宿泊ゲストなら無料で参加することが可能。6時30分~8時開催の“アドベンチャー”と8時30分~10時開催の“ディスカバリー”がある

集合は朝6時30分。ベルデスク前に行くと、スタッフが待っていた。「ザ・リッツ・カールトン京都」のサイクリングツアーは、“ツアー”というだけあってガイド役が付き、サイクリングを安全に楽しめるように先導してくれるという。そこには自転車も数台用意されていた。ロードバイクにも惹かれたが、運動不足で、自転車に乗るのが久しぶりだった筆者は電動自転車を選択。ミネラルウォーターや手袋も用意してあり、細やかな心配りが行き届いているのを感じた。

ツアーの最終目的地は伏見稲荷。ホテルを出発して鴨川沿いを走り、東福寺を経由して伏見稲荷を目指すというコースだ。往復約10kmだが、電動自転車のおかげで走りは快調だし、点と点が線になる喜びも得られる。また、ランニングする人や通勤・通学する人たちと行き交ううちにそこに暮らしているような錯覚を起こし、目に映るすべての風景が今までとは違って新鮮に感じられた。

サイクリングツアーで訪れた伏見稲荷

伏見稲荷を訪れたのは初めてではなかったが、ゲストアクティビティスタッフが説明してくれるおかげで知識が深まった。例えば「根上がりの松」と言って、証券会社や株に関係する人から篤い信仰を受けているパワースポットをじっくり訪れることもできた。何より観光客がまだあまり訪れていない、澄み切った空気の中で参拝する清々しさといったらない。これも早朝に開催されるホテルアクティビティだからこそ体感できることだろう。

サイクリングツアーでは状況に応じて平安神宮や下鴨神社、祇園などにも案内してもらえる

ホテルに戻ってきたときには充実感に包まれていた。それまで仕事漬けの日々で疲れていて、その体調でサイクリングをしたというのに、足取りが妙に軽い。そして、ダイニングでいかにも丁寧に作られた美味しい朝食と付かず離れずの接客を味わって、さらに上機嫌に。あとはチェックアウトするだけだったが、感動はまだおしまいではなかった。

部屋に戻ると「ザ・リッツ・カールトン京都」のロゴが入った水色の封筒が置いてあった。中を開けると、そこには先ほど訪れた伏見稲荷の千本鳥居を写した写真と共にサイクリングツアーを担当してくださったゲストアクティビティスタッフによる手書きのメッセージが添えられていたのだ。なんというサプライズ。心がじんわり温かくなり、またこのホテルに泊まりたいと素直に思わされた。これこそがまさに「世界最高のホスピタリティ」と賞賛される所以なのだろう。

問い合わせ情報

問い合わせ情報

ザ・リッツ・カールトン京都
住所:京都府京都市中京区鴨川二条大橋畔
TEL:075‐746‐5555(代表)


text:Mio Amari