出張時、見知らぬ乗客との“駅弁勝負”をしていることは、第一回目の記事で話した。今回はさらに勝利を盤石のものとするために、地方の味を楽しめ、かつ仕事先に着いたら話のタネになるような駅弁をセレクトした。(談・マッキー牧元 以下同)

▼『とろ~り煮あなごめし<広島>』穴子の上品な旨みが「ふわっ」広がる

とろ~り煮あなごめし/1300円<販売場所:東京駅構内「駅弁屋 祭」ほか>

「とろ~り」というより「ふわ~り」で、穴子は舌に乗せた途端、甘くほぐれていく。すかさずご飯を食べれば、味付けがほどよい淡さで少しモチッとして、米自体の美味しさも感じられる。タレというかツメも、こっくりと甘辛いながら後味よく、穴子を生かす。何といっても穴子の質が良い。穴子の味を一旦切る、柴漬けや小松菜漬けの選択も素晴らしい。実は東京駅のみの販売。

▼『みちのく和膳<青森>』惣菜9種の正統派幕の内弁当

みちのく和膳/1080円<販売場所:東京駅構内「駅弁屋 祭」/上野駅構内「駅弁屋 匠」ほか>

明治から続く八戸の老舗駅弁屋『吉田屋』謹製。鮭ハラス焼きの質の高いこと。脂がいやらしくなく口の中で溶ける。しっとりとした鳥唐揚げは大きく、厚焼き玉子の味もいい。肉シュウマイも上等。きんぴらゴボウ、味付け椎茸煮、味付け人参煮、味付け筍、それぞれの味付けと歯ごたえがよくできている。そしてご飯が美味しい。

▼『海苔のりべん<福島>』見つけたら即買い必至の大人気弁当

海苔のりべん/950円<販売場所:東京駅構内「駅弁屋 祭」/上野駅構内「駅弁屋 匠」ほか>

「のりべん」は、御飯におかかをまぶし、東北の海苔を乗せて、もちろん御飯の間にも海苔とワカメの佃煮が挟まっている。鮭も脂がのって、しっとりと口の中でほぐれていく。玉子焼きは、ふんわりと崩れ、ほんのり甘く、駅弁の「のりべん」史上ベストだろう。かまぼこも上等。太目のきんぴら、大きな里芋煮と手抜きがない。

▼『お母ちゃんの愛情弁当 新潟米膳<新潟>』ひと口ひと口、お米の美味しさ実感

お母ちゃんの愛情弁当 新潟米膳/1350円<販売場所:東京駅構内「駅弁屋 祭」>

割烹着姿のおばちゃんたちの絵がいい。新潟ライスガール監修というのもそそられる。弁当の名前もいい。わっぱ風弁当箱の形もいい。日の丸弁当という姿もいい、と「いいこと」尽くめだ。そして何と言ってもご飯が、実に素晴らしく、冷めていても、ご飯の甘い香りがする弁当は他にはない。全国の駅弁中、ご飯ではピカイチ。鮭の質も高く、5種類くらいの惣菜がギッシリと詰まった、おかず類も申し分ない。

▼『常陸牛 牛べん<茨城>』ダントツ人気! 柔らかな牛肉の甘みがほとばしる

常陸牛 牛べん/1050円<販売場所:東京駅構内「駅弁屋 祭」/上野駅構内「駅弁屋 匠」ほか>

東京駅で売られる牛肉系弁当の中でダントツの一位としてオススメしたいのが、水戸の駅弁「常陸牛 牛べん」である。ブランド牛の常陸牛をすき焼き風に煮て、ご飯の上にのせた駅弁で、脂身と赤身がバランスよく配置され、甘辛い味つけがほどよく、飽きがこない。さらには肉一枚一枚に厚みがあり、食べ応えもあり。

※紹介している弁当は季節や時間帯によっては販売していない場合がありますのでご注意ください。

<第3回 帰りのおつまみ編に続く>

マッキー牧元
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食い蕎麦から割烹、フレンチ、スィーツ、居酒屋まで、幅広いジャンルを網羅するタベアルキスト。「味の手帖」編集顧問。テレビやラジオでも活躍するほか、「料理王国」「食楽」などでも連載多数。

edit : Ryutaro Koizumi(PRESIDENT STYLE)
photograph : Jiro Ohtani